最近「着物警察」という言葉をよく耳にします。いかにも厳しそうな「着物警察」とはどういう人たちの事を言うのでしょうか?
今回は、巷を騒がせている「着物警察」の実態を、体験談やあるあるを通して詳しく解説しながら、「着物警察」に遭遇してしまった時の対処法、また、自分が「着物警察」だと思われないための注意点を紹介していきます。
着物警察とは
「着物警察」とは、街中などで、突然全く面識もないのに、着物を着ている人に対し本人の同意無く、着物の着方を注意したり、実際に着物や帯を直したりする人の事です。
主に着物好きで長年着物を愛用している50代くらいからの年配層の女性が多く、重箱のすみをつつくように着物の着方や品質、髪型などのあら探しをします。
その様子がまるで警察の取り締まりのように見える事から「着物警察」と呼ばれています。
そして、この「着物警察」の存在を恐れて、着物を着る事自体敬遠してしまう人もいるようです。
【着物警察の体験談】着物警察の被害例・あるあるまとめ
実際に「着物警察」の被害にあったと感じている人の体験談やあるあるをみてみましょう。
- 何の断りもなく帯や襟を直された
- 着方がおかしいと指摘された
- 髪型がだらしないと言われた
- 着物の柄や色、品質を馬鹿にされた
何の断りもなく帯や襟を直された
「着物警察」の中には、何の面識も無いのにおもむろに衿や帯などを直してくる人がいます。たとえんばこんな目にあったという人も。
<被害1>
着物で街中を歩いていたら、全く知らない年配の女性がいきなり「衿が崩れていてみっともない」と何の断りも無く着物の中に手を入れてきて、衿を直された。
<被害2>
せっかく気に入って結んでいた帯結びを「もっとこうした方が可愛い」、「こっちのほうがあなたに似合っている」、「帯が崩れている」と何の断りも無く直されて不愉快な気持ちになった。
このように、街中で「本人の了解無く、勝手に直される」という着物警察の行為は、公衆の面前で「自分の和服の知識の無さを否定された」と相手のプライドを傷つけてしまいます。
中には、こういう経験をすることで、着物を着る事自体が億劫になってしまう人もいます。こうしたことが原因で着物離れが進んでしまうのは「着物警察」の本意なのでしょうか?
着方がおかしいと指摘された
上から目線で「着物の着方」について注意してくるのも「着物警察」の特徴です。
<被害3>
彼氏と花火大会に行く途中、見知らぬおばちゃんに「おはしょりがきたない」「丈が短すぎる」「背中に余分なしわがある」等と大声で指摘された。出先で着直すわけにもいかず、注意された事がショックで、「他の人にも変に思われていないか」と気になりせっかくの浴衣デートも全く楽しめなかった。
こんな風に言われては、せっかくの楽しいお出かけが一瞬で台無しになってしまいます。本当に着物が好きで「着物を楽しんで欲しい、着てくれる人が多くなればいい」という人はしない行為です。
中途半端に着物の知識があり、「こうでなければダメ」というガチガチの固定観念を押し付けてくる「着物警察」の言葉は迷惑でしかありません。
髪型がだらしないと言われた
「着物警察」と言われる人達の中には、和服の着方だけにとどまらず、髪型について意見してくる人もいます。
<被害4>
友達の結婚式で着物を着た時に、おくれ毛を出したふんわり系のまとめ髪で参列したら、親戚のおばちゃんらしき人に「きちんとまとめないとだらしなく見えるし、格の高い訪問着にその髪型は似合わない」と言われてしまった。自分ではかわいいと思っていたのでショックだった。
若い人は特に着物を着る機会が少ないものです。
せっかく着物を着て髪型も考えてウキウキしていたのに、「着物警察」の心無い一言で傷ついてしまうのはとてもかわいそうですね。
着物の柄や色、品質を馬鹿にされた
自分の持っている着物や、着物に対する知識を自慢したいという理由で、相手の着物の品定めをしたり、色や柄について意見してくる心無い「着物警察」もいます。
<被害5>
主人と歌舞伎の観劇に行った時の事、近くにいたおばちゃんが私に聞こえるくらいの大きい声で「ねぇ、見てあの人こんな場所でポリエステルの着物を着ているわ、それにあの柄、秋なのに桜柄だなんて、今の季節には合わないし、知らないできているのねぇ…かわいそうに」と言われた。
歌舞伎の観劇といえば着物姿の人も少なくない所です。
「私も着物を着て行こう!」と時間とエネルギーを使ってせっかく着物姿で出かけたのに、「着物警察」のせいで「他の人にもそんな目で見られているのかしら?」と身の置き所が無くなってしまうのはとても残念な事です。
【着物警察を撃退・対処する方法】着物警察にあってしまったら?
それでは実際に「着物警察」に遭遇してしまったらどの様に対処すればいいのでしょうか?
まずは、着物警察にあってしまった時の対処法をみていきましょう。
- 言い返す
- 無視をする
- 礼だけ述べて逃げる
言い返す
「言い返す」という表現をすると「私には必要ありません!」と冷たく突き放すイメージがあるかもしれません。
こちら側が嫌な気分になる前に冷静に断ってしまうのも一つの手ですが、相手も自分も不快にならない上手なかわし方がSNSで話題になりました。
着物でホケホケと町をうろついていたとき、見知らぬ着物警察に呼び止められて「どうしてきっちり着ないのに着物を着るの(意訳)」と聞かれたので「ちょっと着崩しとくと、こうやって着物に詳しい素敵なねえさんが構ってくれンですよ」って言ったら半日連れ回されていっぱい奢ってもらったことある
— 苺時雨 (@hanashigure) October 16, 2018
なんて素敵なエピソードでしょう。
こんな粋な返し方ができると、相手も不快にならずこちらにも精神的なダメージがなく、シャレていますよね。
攻撃的な気持ちをこらえて、さらりとかわすと素敵な出会いにつながるかもしれません。
無視をする
「着物警察」に直接面と向かってあれこれ言われるわけではなくても、通りすがりにわざと聞こえるような大声で嫌味を言われたりなんてこともあります。
間接的に耳に入るものの場合は、「知らないふりをする」のが一番です。
気にせず「無かったもの」として上手に聞き流してしまいましょう。
礼だけ述べて逃げる
これも有効な対処法です。相手の話は丁寧に最後まで聞いて、笑顔で「ありがとうございます、勉強になりました」と感謝の気持ちを伝えたら、すぐその場を後にしましょう。
こうする事で、着物警察と関わる時間を最短で終わらせることができます。言われた事は聞き流し「相手に悪気はない」と言い聞かせれば、すぐに心を切り替える事ができるはずです。
「着物警察」と同じ土俵に立って言い争うのは時間の無駄です。結局争わないのが一番、大人の対応で上手く切り抜けましょう。
【それは本当に着物警察?】もしかしたら本当に守らなければいけないマナーやルールかも
「着物に関して意見してくる」全ての人が「着物警察」というわけではありません。
「着物警察」と受け取った言葉の中には、もしかしたら本当に最低限守らなければいけないマナーやルールもあるかもしれません。
例えば、格の高いパーティーなどへのおよばれに、浴衣を着て行った事を指摘されたとします。
しかしこれは本当の事で、TシャツとGパンでパーティーに行くようなものなのです。場合によっては主催者に失礼にあたることだってあるかもしれません。
また、「大股で歩く」、「大きく手を振って歩く」、「腕を高く上げない」など着物着用時の所作を注意される事もあるかもしれません。しかしこれは着物の「着崩れ」を防ぐためにとても大切な事なのです。
着物について声を掛けられたからといって、全てを否定せずに、その中に真摯なアドバイスが隠れていないかどうかもう一度確認してみる事も大切です。
【着物警察に間違えられないための対策方法】うざい…と思われたくないけど気になるというときは
ここまで、着物警察からの被害を紹介してきましたが、着物を普段着る機会が多い人にとっては、「帯が緩んで困っていたら助けてあげたいけど、着物警察と思われるのは嫌…」「着崩れしそうだから教えてあげたいけど煩わしく思われたくない…」と別の心配が生まれてしまいますよね。
「着物警察」と思われたくはないけれど、どうしても気になるという時にはその気持ちをどのように相手に伝えればよいのでしょうか?
- 直していいかどうかまず声をかける
- 教えてあげているという高圧的な態度を取らない
- 大きい声で指摘をしない
直していいかどうかまず声をかける
「どうしても着物の着方が気になる」「ここだけ少し直せば素敵になるのに」と思った場合は、まず直してもいいかどうかを相手に確認することから始めましょう。
知り合いならともかく、初対面の人に触れられる事をたいていの人は嫌がります。
「教えてあげたい」、「着物の事をもっと知って欲しい」と思う気持ちはよく分かります。
しかし、たとえこちら側が親切心だったとしても、相手には不快に感じたり、余計なおせっかいになってしまったりする場合も多々あるので十分注意が必要です。
教えてあげているという高圧的な態度を取らない
着物の着方について声をかけるとしたら、そのほとんどは自分より年下の若い年代だと思います。まずは「そもそも年上が年下に意見すること自体が高圧的」という事を頭に入れておきましょう。
そして、上から目線の「ここはこうするべき」という断定的な言い方は絶対に辞めるべきです。
基本的にはどんなに奇抜な着方をしていても「その人なりに着物を楽しんでいる証拠」とあたたかい目で見てあげることが大切です。
でも、どうしても声を掛けたい場合には「そういう着方もあるの?そのままでも素敵だけれど、もっとこうした方があなたには似合うわよ」と相手の気持ちを考えながら、なるべく不快にならないよう言葉を選んで伝えましょう。
それでも相手が困った表情を見せたりしたら、無理強いせず失礼を詫び、その場を後にしましょう。
教えてあげるのに、なぜそこまでしなければならないのか、と思ったあなたは黄色信号ですよ。
大きい声で指摘をしない
大きな声で指摘をすると、着物を着ている人だけでなく周囲の人にまで、「あの人は間違えているんだ」と広まってしまいます。
たとえば、ズボンのジッパーが開いていたとして、それを周りにも聞こえるように発言したりは普通はしないものです。
さらに、ジッパーはその場であげれば済みますが、着物の着方や選び方が間違っていたとしても、自宅に帰って着替えるなんてことはできませんよね。
そのため指摘された人は一日中、周囲の目にさらされながら過ごさなくてはいけません。
もし指摘するにしても、こっそりと本人だけに教えてあげるのが親切でしょう。
【まとめ】着物警察は気にしないのが一番。ただしマナーを守って、着物を正しく楽しむ気持ちも大切に
結局のところ「着物警察」の言葉は気にしないのが一番です。
せっかく「時間」と「エネルギー」を使った自分の着物姿です、「着物警察」の言葉を真に受けず、上手にスルーする事も大切。
しかし、時には「その言葉の中に真実があるかも」という事も忘れずに。マナーやルールの中で自由に着物を楽しんじゃいましょう。