着物や浴衣はかわいいけど、着る機会がなかなかないという人も多いですよね。
「私も挑戦してみたい」と思っても、いざ着る時になると「出先で着崩れたらどうしよう」と心配になりなかなかトライできないという人もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は、浴衣が着崩れてしまう原因、着崩れないためのポイント、もし着崩れてしまった場合の応急処置、また着崩れ防止に役立つ便利グッズなどを紹介していきます。
【原因】着物や浴衣が着崩れしてしまうのはなぜ?
着物や浴衣が気崩れてしまうのには以下のような理由が考えられます。
- 補正が不十分
- 歩き方や所作が大きい
- 腰ひもの締めが不十分
- 胸元の処理が不十分
それでは各項目について、さらに詳しく見ていきましょう。
補正が不十分
補正とは、元々直線でできている着物をシワなくキレイに着こなすために必要なもので、「着物に合わせて体のラインの凹凸をなくし筒状に整える作業」の事を言います。
補正が十分でないと、胸元がぶかぶかしてしまったり、帯の周辺にシワがよってしまったり、と不格好になり美しく着る事ができません。
外側からは決して見える事のない補正ですが、この補正を行うか行わないかで「美しい仕上がり」を大きく左右してしまいます。
着物よりも簡易的な浴衣の場合でも、胸の凹凸を少なくしたり、ウエストのくびれをなくしたりなど最低限の補正をすると、着物のよれやシワをかなり防ぐことができますよ。
歩き方や所作が大きい
浴衣を着ているときに洋服感覚で動いてしまうのは着崩れの原因です。
腕を大きく振って歩いたり、肩より上に上げると脇がたるんでしまいます。また大股で歩くこともと裾が広がり浴衣が乱れる原因に。
出来上がりはキレイだったのに段々着崩れてしまう場合は、「動作が大きいのかな?」と自分の所作を点検してみましょう。
腰ひもの締めが不十分
腰ひもの締めを十分に行わないのも、着崩れの原因です。
「紐を締めすぎてしまうと後で苦しくなるから緩めに結んでおこう」と、腰ひもをしっかり締めないと、時間が経つにつれて裾が落ちてきてしまいます。
もし締め付けがどうしても苦しいという場合には、幅が太いものや絹素材で厚手のものを選ぶなど、腰ひも自体を変えてみると、キープ力がアップします。
紐の幅をいっぱいに使って面で支えるよう意識するといいでしょう。
胸元の処理が不十分
胸元の処理を十分行わないと、だんだんと襟元がゆるんで崩れてきてしまい、老けて見えたり、とてもだらしない印象になってしまいます。
コーリンベルト(対処方法の項目で詳しく説明します)や伊達締めを正しく使って綺麗な襟元をキープできるようにすることが大切です。
【対処方法】着物や浴衣の着崩れを防ぐ方法
着物の着崩れを防止するためには、着用時にどの様な事に気を付ければよいのでしょうか。
あらかじめ気を付けておくべきことは以下の通りです。
- 適切な補正を行う
- 所作に気を付ける
- 腰ひもを正しく締める
- 襟元をコーリンベルトで整える
さらに詳しく見ていきましょう。
適切な補正を行う。補正パッドが便利!
美しい仕上がりのためにも、着物や浴衣を着るときは必ず補正を行いましょう。補正がいらないという人はまずいません。
主に胸の上、胸の下、ウエストの体の凹凸をタオル等を使って体のラインを筒状に整えていきます。「補正パッド」と呼ばれる着物の補正小物があると、胴に巻き付けるだけで、簡単に体の凹凸をなくすことができます。
タオルなどをぐるぐる巻きつけると苦しいのではと思う人もいるかもしれませんが、それは逆で、補正をしない方が無駄に紐を締め付けなくてはならず、かえって苦しくなります。
浴衣や着物自体の着崩れはもちろんのこと、シワなくスッキリとした着姿になる上、帯の型崩れも防ぐことができるので、補正は手を抜かないようにしましょう。
所作に気を付ける
浴衣や着物は、どうしても動きが制限されてしまいます。それに逆らわないように「着物を着たらおしとやかに」これが着崩れを防止し、着物の所作を美しくするポイントです。
以下浴衣を着た時に気を付けたい所作について説明します。
座るとき
イスの正面に立ち、太ももの後ろ側に手を入れ、そこから両サイドに向かって手を滑らせながら座りましょう。お尻のシワがきれいに伸び着崩れを防ぐことができます。
帯の形が崩れてしまうのを防ぐために、背もたれは使わず浅く腰掛けるのもポイントです。
歩くとき、上り下りをするとき
歩くときには、背筋を真っ直ぐに伸ばし、歩幅は小さく、内股ぎみに歩きます。
階段の上り下りの時は上前の裾を少し持ち上げるようにすると歩きやすくなり、裾を踏んで着崩れてしまうのも防ぐことができます。
トイレに行くとき
一番着崩れが気になるのがトイレです。
用を足す前に浴衣の裾、下着の裾の順番に持ち上げて帯の上側に挟み込みます。クリップを持ち歩いておくと、裾を止める時に役立ちます。
トイレを出る時は、おはしょりがめくれていないか、帯の形が崩れていないかをチェックしましょう。
腰ひもを正しく締める
美しい仕上がりをキープするために、腰ひもを正しく締める事も大切なポイントです。
腰ひもの位置は、骨盤の骨の出っ張っている所の少し上くらいがベストです。くびれているウエストの部分で腰ひもを結んでしまうとだんだん上の方へと紐がずれていってしまい、着崩れの原因になってしまいます。
正しい位置に腰ひもを結ぶ事で、割としっかり締めても苦しさや痛みもあまり感じません。腰ひも結びのポイントは「骨盤の上で少しキツイかな?と思うくらいしっかりめに結ぶこと」です。
それでも締め付け感が気になる場合は、幅が太いものや絹素材で厚手のものを選ぶと、紐が着物を面で支えてくれるため、苦しさが軽減します。
衿の崩れが気になるときはコーリンベルトが便利
衿合わせは、喉のくぼみの部分で衿を交差させるのが基本です。衿合わせは年齢によって微妙に変わり、くぼみよりも少し下で合わせると大人っぽくなり、少し上で合わせると若々しい印象になります。
ただし、下過ぎるとだらしなく、上過ぎると苦しそうに仕上がってしまうので「ほんの少し」を意識しましょう。
美しい衿元をキープするために、コーリンベルトを使うと便利です。コーリンベルトとは、和装用品の一つで、ゴムバンドの両端にクリップが付いています。
この片方(ゴムが一重になっている方)を下前の衿(正面から見て左側の衿)に止め、後ろ側から回して輪になっている方でゴムの長さを調節し、上前の衿(正面から見て右側の衿)に取り付けましょう。
しかし、せっかくコーリンベルトをしても、ゆるすぎると止めている意味がなくなり、すぐにダルダルになってしまいます。逆にコーリンベルトがきつ過ぎると、時間が経つにつれて胸元がつまっていってしまい苦しそうな印象になるので美しくありません。
コーリンベルトを使う時は「ゆるすぎず、きつすぎない丁度良い長さに調節する事がポイントです。
更にしっかり衿元をキープするために、コーリンベルトの上に更に紐や伊達締めを結び固定すると、より崩れを防ぐ事ができます。
【応急処置】浴衣が気崩れてしまった時の直し方
「準備万端で出かけたけれど、途中で崩れてきてしまった」という場合の応急処置も頭の中に入れておきましょう。
着物の用語がわからないという人はこちらを確認してください。
- 身八つ口…着物の脇、袖の下にある空きの部分。
- おはしょり…着物の帯の下に出ている部分、腰ひもで長さを決め、余分を折り返した部分。
- 上前…着物の上に重ねる身頃の部分。
- 下前…着物の下になる身頃。
- 衣紋…後ろ衿の部分。「衣紋を抜く」という言葉を使いますが、後ろ衿と首の間を空けて女性らしさを演出します。
襟元、胸元が緩んでしまったら
襟元や胸元が緩んでたるみができた場合は、正しい方向から衿を引っ張り、正すことで直すことができます。
- 1)左手で身八つ口(浴衣のサイドにある切れ目)から手を入れ、下前の衿(正面から見て左側の衿)を引っ張り、たるみを伸ばす
- 2)右手でおはしょりの下に出ている上前の衿(正面から見て右側の衿)を引っ張り、たるみを伸ばす
こうすることで、衿の余分なたるみがスッキリし、美しい胸元になります。
ただ、この時あまり強く引っ張りすぎると、衣紋(背中側の衿)が起きてきてしまうので強く引っ張りすぎないようにしましょう。
半襟が隠れてしまったら
浴衣は基本的に一枚で着るものですが、着物は中に襦袢を着用します。もし着物の衿がだんだん詰まって半襟が隠れてしまった場合は以下の方法で衿を直しましょう。
- 1)耳の下の浴衣、半襟を指でつまんで固定し、帯の上線近くの衿をグイっと脇の方に向かって横に移動させる
- 2)余分なシワは帯に人差し指を入れて、中心から体の外側に向かってなぞるようにして脇に寄せる
きちんと半襟をつまんでおかないと、中の襦袢まで動いてしまい綺麗に襟を出せないので要注意。
背中や腰の部分に緩み、たるみができてしまったら
背中や腰の部分にたるみができてしまうと、スッキリ見えません。背中側の後ろのおはしょりを両手で持ち、下に引き下げると背中のたるみがスッキリします。
また腰の部分がぽってりとしてしまった場合には、腰ひもの上に余分なたるみを押し込んで、最後に背中のたるみの時と同様に、後ろのおはしょりを下に引っ張りスッキリさせましょう。
裾が下がる、身ごろがずれてきてしまったら
裾が下がってしまう時は、まっすぐ立って落ちてきてしまった裾をおはしょりの中に入れ込みます。何度直しても落ちてきてしまうというときは、さらに次の方法で対処します。
- 1)前のおはしょりをめくる
- 2)腰ひもが緩い場合は、結び目の部分だけそっと解き、もう一度しっかり締めなおす
- 3)裾が下がってしまっている場合は、裾を丁度良い長さに合わせ、余分は腰ひもの上に押し 上げる
- 4)めくったおはしょりを下ろしてキレイに整える
裾は踏んづけたりなどして、完全に下がりきってしまうと修復不可能になるため、手遅れになる前に直しましょう。
おはしょりがずれてしまったら
体をねじったりすると、おはしょりがずれてしまう事があります。
おはしょりの正しい位置は、おはしょりの衽付け線(正面から見て着物の左よりにある切り替え部分)と身ごろの衽付け線がピッタリと合う位置です。この位置におはしょりを戻すことを意識しましょう。
- 1)帯の下側から指を入れ、シワやたるみを取るように左の脇に余分な生地を寄せる
- 2)脇で余った布は、脇でつまんで後ろ側に倒す
帯が緩んで下がる、崩れてしまったら
もともと帯結びをしっかりしていなかったり、人込みの中を歩いたりして万が一帯が緩んでしまったら、背中側の帯の下側からハンカチや手ぬぐい、小タオル等を結び目の下に入れ込みましょう。
帯のたるみが取れ、結び目も立ち上がりシャキッとします。
帯が上がってきてしまったら(男性の場合)
男性の場合、帯の位置は腰骨の位置にあるのがベストです。
しかし、歩いたり座ったりすることで帯の位置がだんだん上に上がってきてしまうことがあります。
そんな時は、帯の上側から両手の親指を帯の中に差し込み、上から体重を掛けながら下へと押し下げましょう。
その後、帯の下側に指を入れ、中央から外側に向かって帯に沿わせながらシワを伸ばすと元通りになります。
持っておくと便利な着崩れ防止、対策グッズ
着崩れ防止に役立つ便利グッズとおおよその価格を紹介します。
安全ピン、ヘアピン
浴衣の衿合わせをキープするために、安全ピンがあると大変便利です。
衿合わせが崩れないように気を付けながら、上前の衿を少しめくり、下前の衿と一緒に安全ピンで固定すると、綺麗な衿元を長時間キープすることができます。
この時、浴衣の表面に安全ピンの形が響かないように、小さめの安全ピンを使いましょう。
また、浴衣の下に襦袢を着る場合は半襟の衿合わせの部分にヘアピンを差し込んで固定すると半衿が崩れにくくなります。安全ピン、ヘアピン共100円ショップなどで購入できるもので十分です。
補正パッド、和装用ブラジャー
前述したように、浴衣を美しく着こなすためには、補正を行って体のラインの凹凸をなくすことがポイントです。
タオル等を使い胴体に巻き付けることで補正をする方法もありますが、和装用の補正パッドを使うと簡単に補正ができます。
補正パッドには、ウエストの補正ができる「ウエストパッド」、ヒップの補正ができる「ヒップパッド」、両方の補正が一度にできる「一体型」の補正パッドといくつか種類があります。
中には、肌襦袢に補正パッドが付いているものもあり、好みに合わせて選びましょう。
補正パッドの価格はおおよそ2,000~5,000円程で購入できます。
また、胸のボリュームを抑えてくれる「和装ブラジャー」もおすすめです。
通常のブラジャーは、バストが出っ張り和装には不向きですが「和装ブラジャー」は、胸のボリュームを抑えバストの凹凸をなくし平らに整えてくれます。
和装ブラジャーには色々なタイプがあり、ホックで止めるもの、チャック付きのもの、上からかぶるタイプといろいろあるので、これも好みに合わせて選びましょう。
和装ブラジャーは、1,500円程度のものから8,000円のものまで種類や価格も様々です。
コーリンベルト
前述しましたが、コーリンベルトとは、綺麗な衿元をキープするための和装グッズです。ゴムバンドの両側にクリップが付いています。
間違えやすいのが、止め方です。輪になっている方と、一重になっている方がありますが、一重になっている方を下前の衿に挟み、上前を止める時に輪になっている部分の長さを丁度良い長さに調節します。
コーリンベルトは、500~1,000円程で購入できます。
まとめ
浴衣の着崩れが心配でなかなかチャレンジできなかった人も、「着崩れの原因」「着崩れないためのポイント」「万が一着崩れてしまった時の対処法」この3つさえ頭の中に入れておけば安心です。
夏限定でしか楽しめない浴衣をキレイに着こなして、いろいろな所に足を運び浴衣ライフを思いっきり楽しみましょう。