着物を着崩れにくく、すっきりと着こなすために必要になるのが「補正」です。
しかし、「そもそも補正って必要なの?」「どこをどのように補正したらいいの?」「方法が分からない」などと戸惑っている方も多いかも知れません。
そこで今回は、着姿を美しくするために大切な補正について、「なぜ補正が大切なのか」という補正の考え方から、部位別、体形別の具体的な補正の方法まで詳しく解説していきます。
着物や浴衣を着るときの「補正」とは
そもそも着付けの補正とはどのようなものなのでしょうか。補正の役割、そしてメリット・デメリットを紹介します。
補正は「着物の似合う体型」に近付けるために行うもの
補正はボディーラインを「着物の似合う体型」に整えるために行います。
着物はそもそも直線断ち、直線縫いでできています。筒形の着物をシワなくキレイに着るためには、体のボディーラインもそれに合わせて凹凸をなくし、筒状に整えてあげる必要があります。この作業が「補正」です。
しかし、必要の無い所に補正を入れてしまうと、体の厚みが増して太って見えてしまいます。補正をする時には「必要な場所に必要な分だけ」行う事がポイントです。
補正は肌襦袢を着た後、長襦袢を着る前に、タオルや補正用のパッドを使って行います。
補正をするメリット・デメリット
補正をすることによるメリットは以下の通り。
- 着姿が美しくなる
- 着崩れしない
正しく補正を行うと、直線でできている着物と体の線とがピッタリフィットします。このため長時間着物を来ていても着崩れず、すっきりと美しい着姿をキープする事が出来ます。
外側からは決して見える事はありませんが、補正は着物の綺麗な仕上がりを大きく左右する大切な作業です。
補正をするに越したことはないので、デメリットはあまりないのですが、しいて挙げるなら「面倒臭い事」です。また、襦袢、着物、帯等にプラスして、補正具やタオルなどを体に付ける事になるので「暑苦しい」という点もデメリットの一つかもしれません。
簡単にできる!補正の方法
「補正は苦手!」という人も多いかもしれませんが、ポイントを知れば意外と簡単です。以下、補正の方法を紹介しましょう。
用意するのはタオルか補正パッド(補正ファンデーション)
補正で使用するのは主に、タオルや補正パッドです。
タオルを使う場合は、補正に必要な厚みに合わせて縦2つ折り、3つ折りにし、胴に巻き付けます。また、折りたたんでヒップのくぼみに乗せたりしても使います。
タオルを使うメリットは、その人の体形に合わせて厚さを自由に調節できる所です。くびれが大きい人は厚めに折り畳んで使い、反対にほんの少し補正が必要な場合は、縦2つ折りにして胴に巻きます。
使うタオルは、厚みを微調節できるように、分厚い物、起毛が経っているものは避け、薄く柔らかいものを使いましょう。胴やヒップに当てたタオルは腰紐でズレないように固定できればOKです。
補正パッドとは和装用の補正グッズで、胴回りに巻き付ける「ウエストパッド」、ヒップラインを平らに整えるための「ヒップパッド」等があります。
どちらもパッドの両側にゴムが付いていて、フックで簡単に止める事ができます。しかし、補正パッドの難点は「厚みを調節できない所」です。
補正が必要な箇所や厚さは人それぞれ。しかし、補正パッドは万人向けに作られているものなので、その人の体型に合わせて厚みを調節することができません。したがって、必ずしも「補正パッドで補正をしたから大丈夫」というわけではありません。
正式なパーティーや、式典など格の高い場に招かれた場合には、補正パッドでは足りないところをタオルや綿花で補充するとより丁寧な補正を行う事ができます。
一方「普段着やちょっとしたお出かけ時に着物を着るので簡単に補正したい」という場合には、補正パッドがあると大変便利です。
補正をするのは主にウエスト・ヒップ・バスト
補正は、主にウエスト・ヒップ・バスト等の体の凹凸のある部分に行います。それぞれどの様な状態になれば良いのか、部位別にみていきましょう。
ウエストの補正
正面から見た時、ウエストのくびれが無くなり平らになるように補正します。体型に合わせて、胸の脇から骨盤にかけてのくびれをタオルや補正パッドで平らに整えます。
ウエストのくびれを平らに整える事で、着物がシワになるのを防いだり、腰ひもが上に上がり着崩れの原因になってしまうの事を防ぎます。
ヒップの補正
横から見た時、背中からヒップにかけてのラインを真っ直ぐに整えます。
一番くぼんでいるヒップの上の部分と、ヒップの出っ張りのくぼみを埋めるように、タオル等で厚みを調節しながら平らに整えるのがポイントです。
ヒップの補正をする事で、帯の位置が定まり結び目もしっかりと固定されます。
バストの補正
横から見た時にバストトップとウエストの間(バストの下)に凹凸がある場合は、その部分にフェイスタオルなどを入れて凹凸をなだらかにすると、帯がしっかりと体にフィットし、崩れません。
また、ふくよかな胸の場合は、和装ブラジャーやさらしなどでバストのボリュームを抑えます。特にふくよかな胸の場合この作業を行わないと、着物を来た時に帯の上に胸が乗る形になり、ボテっとした印象に見えてしまうので注意しましょう。
鎖骨からバストトップの間にくぼみがある場合は、小さく裂いた綿花などを置くとより丁寧です。その場合綿花はハサミで切らず、ちぎる事によって下着にはりつきやすくなります。ほんのひと手間ですが、衿の浮きを抑え、胸元がスッキリと仕上がります。
【体型別】補正をする際の注意点とコツ
ここからは、体型別の補正のポイントをみていきましょう。補正を行う時は背筋を伸ばして胸を張った状態で行います。
くびれがある場合/ない(太っている)場合
ウエストにくびれがある場合は、くびれの部分にタオルや補正パッドを当てて凹凸をなくします。正面から見た時に胸の脇から腰骨までを平らに整えるイメージで行います。
太っている場合、は胴回りの補正はあまり必要ありません。ただ、胸の脇から骨盤の間の肉がぼてっと出ている場合は等は、2つ折りにしたタオルで脇の肉を前に持ってくるようなイメージでしっかりと巻き付けると凹凸が少なくなります。
胸が大きい場合/小さい場合
胸が大きいという事はその分凹凸も大きいということです。スッキリとした筒形になるように、和装ブラジャーやさらしを使って胸のふくらみを潰すイメージで、ボリュームを抑えましょう。
前述しましたが、バストトップからウエストの間にくぼみがあると、着物を来た時に帯の上に胸が乗ってしまう形となりぼてっとした印象になってしまいます。
そうならないためにも、胸の凹凸はできるだけ平らに整えましょう。
なお、胸が小さい場合は、特に胸の補正は必要ありません。
肩幅が広い場合/いかり肩の場合
肩幅が広い場合は特に補正は行いません。半衿の合わせ方、着物の合わせ方を工夫することで、肩幅の広さを目立たなくすることができます。
また少し肩を下げ、首を長くすることを意識するだけで、印象はかなり違ってきます。
いかり肩の場合は、着物の似合う「なで肩」に近づけるためと、肩の首側にシワがよらないために、薄手の手ぬぐいを縦に2つ折りにし、襦袢の衿の形にそって肩にかけると着物を着た時になで肩に少し近づきます。
この時、厚めの布を肩に乗せてしまうと首が短く見えてしまうので「薄手の布を使う」ことがポイントです。
着物の補正の疑問点Q&A
着物の補正を行う時によくある疑問点をみていきましょう。
Q.和装のとき、ブラジャーはどうするの?
和装の場合、嫌でなければブラジャーは外すのがベストです。
洋服の下に付けるブラジャーは胸を立体的に、そしてボリュームアップすることを目的に作られています。できるだけボディーラインを平らに整えたい和服の場合にはブラジャーの着用は、着崩れの原因になってしまいます。
また、ワイヤー入りのブラジャーの場合は、着物や紐で圧迫されワイヤーが体に当たって痛い場合もあるので、なるべくブラジャーは外しましょう。
Q.夏や補正をすると暑いときはどうすればいい?
ただでさえ暑く、汗をかきやすい着物、その上季節が夏となると「余計なものは極力身に付けたくないから補正は省きたい」と思うのも当然です。
しかし、キレイな着姿のために多少の暑さは我慢しましょう。やはり補正をするとしないでは、仕上がりに大きな差が出ます。襦袢の素材を通気性の良い夏用のものにするなど、他の部分で工夫をしてみましょう。
Q.浴衣にも補正って必要?
もちろん浴衣も着物の一種なので補正は必要です。見えない部分のケアをしっかり行って夏にしか楽しめない浴衣もキレイに着こなしましょう。
ただ、浴衣は洋服で言うところの「TシャツとGパン」のようなものなので、あまりしっかり補正を行わなくても大丈夫です。
和装ブラ、補正パッドを付けるだけでも仕上がりの美しさは全然違ってきます。
まとめ
たかが補正されど補正、補正のひと手間で仕上がりが大きく変わることがお分かりいただけたかと思います。
着崩れを防ぎ、着姿を美しくしてくれる補正を正しく行って着物ライフを存分に楽しみましょう。