着物の基礎知識

着物の裏地とは?名前や生地に使う素材の種類まとめ。お手入れとリメイクの方法も紹介

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着物裏地 着物の基礎知識

着物は仕立て方で大きく2つに分かれます。一つは単衣(ひとえ)、そしてもう一つは袷(あわせ)です。単衣は裏地が付いていない着物、袷は裏地を付けて仕立てられた着物です。

単衣は夏の時期に、袷は1年のうち10月から5月に着用されます。

着物はどうしても表地の柄や帯などに目が行きますよね。

しかし、袷の着物の「裏地」も隠れたおしゃれポイントがあり、また、着物を着る上で知っておきたいちょっとした決まりごともあって、見えない部分とはいえ奥が深いです。

今回はこの裏地にスポットを当てて紹介します。

袷(あわせ)の着物の裏地とは

振袖04

袷の着物は簡単に言うと「裏地の付いた着物」で、一般的に10月から翌5月あたりに着るものです。

裏地は表地を守る役割があり、また、歩く際の裾捌きなど、動きやすさにおいても大きな役目を果たしています。

フォーマルな着物とカジュアルな着物では合わせる裏地も違って、ちょっとしたルールがあります。

カジュアルな着物の裏地は「見せる部分」と「見せない部分」に分かれる

裏地は2つの部分に分かれており、それぞれ「胴裏」「八掛」と呼びます。

裏地

図で示した青い部分が八掛、白い部分が胴裏です。

八掛は「裾回し」とも呼ばれます。胴裏が「見せない部分」とすれば八掛は「見せる部分」。

カジュアルな着物の場合はこの「見せる部分」で、さりげないおしゃれを楽しむのもまた粋なものです。

胴裏

胴の部分に使われる裏地を「胴裏」と呼びます。

着物着用時には見えることはありません。基本的には白色で、カジュアルな着物の場合は白色やピンク色が用いられることも。

丈夫ですべりの良い素材の生地を使い、着物の着脱をしやすくします。

基本的に本絹の白絹やキュプラ、アセテートの平絹か絹との交織物を表地に合わせて用います

八掛・裾回し

袖口や裾の裏に付ける裏地を「八掛」または「裾回し」と呼びます。

昔は前身頃、後身頃、衽(おくみ)、衿先に2枚ずつ、合計8枚の布を裁断して付けられたことから、八掛の名前が付いています。現在はこれらに袖口の2枚が加わり合計10枚です。

八掛が付くことで裾捌きがよくなり、また、表地も傷みにくくなります。

さらに、手を動かす所作や歩く時や座る時など、動作の折に見えることが多いので、ここは言わば「見せる部分」。仕立てる際は見えることを意識して、さりげなく表地とコーディネートすると少し上級編のおしゃれになります。

たとえば裾回しを着物と同じ色にすると裾が柔らかい印象になりますし、着物の柄や帯から一色取ると、印象的かつ上品にまとめることができるでしょう。

生地は表が錦紗縮緬、紬、モスリンなどこちらも表地の素材に合わせます

フォーマルな着物は表地と同じ素材で作られる「共八掛」

フォーマルな着物の場合、八掛の部分は表地と同じ生地で作られます。これを「共八掛」と呼びます。

第一礼装である留袖や色留袖はもちろん、準礼装の訪問着も共八掛で仕立てられるのが一般的です。

これら格式の高い着物の共八掛には柄が描かれていることも多く、ちょっとした動作の折にも気品を感じられる仕立てとなっています。

着物の裏地に用いられる生地の素材

着物の裏地に用いられる生地の素材には主に絹、綿、化繊があります。

通常は表地が絹であれば裏地にも絹を、表地がポリエステルの場合は裏地もポリエステルのものを使います。

同じ素材で仕立てた方が、着物を洗った時の縮みに差が出ないというメリットがあるのです。

また、裏地の質は着物全体の仕上がりに大きな影響を与えますので、表地とのバランスも大切です。

綸子

肌触りがとても優しい絹。裏地に絹を使用すると着物の着崩れがしにくいです。

他の素材に比べて値段は上がりますが、通気性がよく、さらりとしており、とても心地よく着物を着ることができます。

羽二重

羽二重は高級絹織物の一種です。

経糸、緯糸とも撚りをかけない生糸を使用し、経糸2本に緯糸1本を交差しながら織り上げます。

織り上げたあと精練(繊維から余計な不純物を取り除くこと)し、更に漂白して白生地として仕上げますが、用途によって染めて利用されることも。

光沢があり、肌触りがよく上質で、留袖などの礼装を仕立てる際に用いられるのを始めとして、正絹の着物には羽二重の胴裏を合わせることが多いです。

白絹(小川絹)

染められていない白地の絹を「白絹」と言います。

小川絹は埼玉県小川町で生産されている絹織物で、奈良時代に高麗人によりその技術が伝えられたとされています。

1300年以上の歴史を誇り、小川町の伝統産業となって連綿と受け継がれてきた小川絹は重厚感ある上品な仕上がり。

今は主に着物の裏絹として数多く生産されています。

紅絹(もみ)

紅絹も絹織物の一種です。

「紅」という字に表れているように、真っ赤に染められた無地の絹織物です。最初にウコンで黄色に下染めし、それから紅花で上染して仕上げられています。

かつては紅で染められたものが女性の肌着や着物の裏地に多く使用され、紅絹は非常にたくさんの需要がありました。

明治時代以降は化学染料が用いられ、今では紅絹は特別な式服の裏地に使用されるなど、限定的なものになりつつあります。

綿

綿生地

綿の生地は私たちの普段の生活に最も馴染みがある素材であると言えるでしょう。

綿素材の裏地はカジュアルな着物に用いられます。また、男性物の着物は表地が絹でも木綿地の裏地をつけることが多いです。

木綿の裏地をつけると、パリッとした張りのある感じに仕上がります。

晒木綿(さらしもめん)

晒木綿とは綿織物を漂白したもので、単に「さらし」と呼ぶこともあります。

さらしは出汁をこしたり食器を拭いたりと、かつての日本の台所には欠かせないものでした。

吸水性が良く柔らかで、その一方で乾きが速いので汗をぬぐうのにも良く、襦袢など肌に直接触れるものにも多く利用されています。

赤ちゃんの産着にも用いられています。

新モス

新モスとは「新モスリン」の略称です。

「モスリン」とはもともと明治時代にあった毛織物の一種で、温かく柔らかい素材であったことから普段着の和服や冬物の襦袢に用いられていました

「新モス」はそのモスリンに似せた綿織物です。

撚りの回数が少ない糸(甘撚り)で薄く平織りされ、表面はやや毛羽立てて仕上げられています。

柔らかく肌に優しい感触で、着物の裏地の他、パジャマの裏地や肌着などに用いられています。

カナキン

カナキンは綿織物の一種で「金巾」とも表記されます。

固く撚った経糸と緯糸によって均等な密度で織られており、目が細かく、薄地です。16世紀にポルトガルからインド産のものがもたらされたのが始まりであると言われています。

着物の裏地の他、シャツやシーツといった普段の生活に馴染みのあるものにも多く利用されています。

天竺木綿(てんじくもめん)

天竺木綿はやや太めの経糸と緯糸を使って織られた綿織物です。

カナキン同様、経糸と緯糸は同じ密度で平織りされているので、目が詰まっており丈夫です。

生地自体もカナキンよりはやや厚手のため、生地のままで小麦粉などを入れる袋として使用されることも。

漂白や染色されたものは、衣服の裏地のほか、敷布や風呂敷などにも利用されています。

化繊(ポリエステル)

最近は「家で洗える着物」を目にする機会が増えました。これらの着物は主にポリエステルで仕立てられています。

ポリエステルに代表される化学繊維は、一般的に耐久性に優れ、速乾性があるため、おしゃれ着として気軽に利用することが出来ます

ポリエステルの着物にはポリエステルの裏地をつけるのが基本的です。

ポリエステルの中でも品質に違いがあるので、物によっては静電気が起こりやすいということがあります。それでも雨の日だったり、お手軽に着物を着用したい場合は、扱いやすくて便利でしょう。

着物の裏地のお手入れやリメイクの方法

着物を着て出かけた日は、家に帰るともうくたくた。

そんな経験をした人も多いのではないでしょうか。でももうひと頑張りして、着用した着物のお手入れをしておきましょう。

着物をきれいに長持ちさせるためにも、ここが頑張りどころです。

裏地のある着物のお手入れ方法

着用中は気付かなくても、着物を着ているときは汗をかいていることが多いです。着用後の着物は湿気を含んでいるので、必ず干してからしまいます

和装用のハンガーを利用すると一番良いでしょう。

裏地が付いている着物は長時間干し続けると型崩れし、次回着用する際に着付けがしづらくなすため注意が必要です。風通しの良い場所で2時間から4時間を目安に、光が差し込む部屋はできるだけ避けて干してください。

また、衿や袖口、裾回りは特に汚れが付きやすいところなので、汚れが付いていないか確認します。食事をした場合は、気付かぬうちに上前部分が汚れていることもありますので、こちらもチェックしておきましょう。

裏地は表地に比べて薄く、黄ばみが出てもクリーニングができないので、基本は交換

着物の裏地は時間の経過と共に黄ばんでくることがあります。

これにはいくつか原因があり、裏地が絹の場合、一つは空気中の酸素と絹が長い時間をかけてゆっくり化学反応し、全体的に薄く黄ばんでいくこと(酸化黄変が考えられます。

もう一つは着用時の汚れが付着しており、それがシミになっている場合です。後者の場合は、カビが発生している可能性が高く、そのまま放っておくと表地まで痛めてしまう危険性があります。

いずれにしても、裏地に黄ばみが出た場合、裏地のみをクリーニングすることはできないので、基本的には新しいものに交換することになります。

特に汚れが原因で裏地にシミが付いている場合は、できるだけ早めに交換することをおすすめします。そのままだと付着した汚れやカビが表地まで広がってしまうかもしれません。

裏地の交換をしてくれる専門店は数多く、中には着物を宅急便で送ると見積もりをしてくれるところも。自分に合ったお店を探してみましょう。

袷はたたみじわが付きやすいので、しっかりしわを伸ばして保管する

干した後の着物は畳んで保管します。裏地が付いている袷の着物はどうしてもたたみじわが付きやすいので、しっかりしわを伸ばして畳みましょう。

畳んだ着物はたとう紙に包んで、桐のタンスに収納するのがベストですが、桐のタンスがなければ衣類用のプラスチックケースで保管することもできます。正絹の袷は特にしわになりやすいので、タンスやプラスチックケースに入れる際はできるだけ一番上に入れるようにするといいですね。

プラスチックケースを利用する場合は、除湿シートも一緒に入れ、そしてプラスチックケース内の空気を定期的に入れ替え、できるだけ湿気がこもるのを防ぐようにして下さい。

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裏地のリメイク方法。古い胴裏、八掛の使い道

リメイク

最近は洋服をリメイクして、自分流の着こなしを楽しむ人が増えていますね。洋服だけではなく、着物をワンピースやコートにリメイクする人もいます。

実は着物の裏地も表地同様、リメイクして新しいものに作り変えることができるんです。ここでは簡単リメイクのアイデアを紹介します。

八掛はストールやポーチなどの小物にもなる

八掛は巾着やポーチなどの小物にリメイクすることができます。シュシュを作っても可愛いですね。また、ちょっと意外ですが、八掛を縫って繋げてストールにしてもほどよいふんわり感があって素敵です。

つまみ細工でコサージュやかんざしなど、着物に合う和の装飾品を作る人も。「見せる部分」の八掛にはカラフルで美しい生地が使われていることが多いので、素敵な小物にリメイクできますよ。

胴裏は手作りマスクやペチコートやキャミソールなどのインナーに

絹の胴裏は、マスクを作るのに適した素材です。さらっとして、肌触りがよいマスクに仕上がります。

ペチコートやキャミソールなど、直接肌に触れるインナーにしてみるのもいいでしょう。パジャマにすると着心地が良く、特に夏はぐっすり安眠できそうです。

安眠と言えば、枕カバーにするのもおすすめです。これなら手でも簡単に縫えますね。肌に優しい絹は眠っている間に髪もいたわってくれるでしょう。

シミが気になる場合は濃い色に染め直すと選択肢が広がる

胴裏は基本的には白色ですので、シミや黄ばみが出るとリメイクしても目立ってしまうことがあります。そんな時は一度濃い色に染め直してみてはいかがでしょうか。

今は家で手軽に布を染めることができる染料などもありますので、シミや黄ばみでリメイクをあきらめる前に試してみるのもいいのでは。うまく染められるとリメイクの幅が広がりますよ。

まとめ

着物は表地の柄や帯にどうしても注目しがちですが、裏地にもフォーマル向けのものやカジュアル向けのもの、また、表地との合わせ方のちょっとしたお約束があります。

着物を正しく美しく着こなすために、裏地のことも是非知っておきたいものです。

また、カジュアルな着物では裏地にも「見せる部分」と「見せない部分」があり、「見せる部分」を楽しむのはとても粋で通なおしゃれです。

知れば知るほど奥が深い着物。この奥深い着物文化が日本の伝統文化であるということは私たちにとって大きな誇りです。1つ1つゆっくりと知識を深めながら、着物文化を楽しみましょう。

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