着物の基礎知識

【季節別】着物の柄の種類と選び方。通年着られる柄はどれ?柄の先取りって何?

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着物季節柄 着物の基礎知識

着物には、動物や風景、植物など様々なものが描かれていて、それぞれに「似合う季節」があります。

「必ずこうしなければいけない」という固いルールではありませんが、着物の豆知識として頭に入れておくと、今まで以上に着物を楽しむことができるでしょう。

そこで今回の記事では、着物の柄ごとの「似合う季節」、そして柄の持つ意味などを詳しく紹介していきます。

着物の柄は季節を少し先取りすると粋

さくら

「着物に描かれている花や植物は、季節を少し先取するものを選ぶのが粋」とされています。例えば花の模様の場合、実際にその花が咲く1ヶ月前くらいから、咲く直前までがおすすめの着用シーズンです。

こうして季節をずらして着物の柄をチョイスするのは、「これから来る季節を着物の柄で予感させる」という意味合いや、「自然の美しさに勝ものはない」、「本物の花よりも目立ってしまうのは粋ではない」という昔からの自然を尊ぶ気持ちの表れなのかもしれませんね。

だからといって「必ずこのルールに従わなくてはいけない」というものではありません。「こんなルールもあるんだ」と、雑学的な感覚で楽しんでみましょう。

【季節別】おすすめの着物の柄まとめ

正座

着物には様々な柄がありますが、季節を意識して着たい柄は主に花や草などの植物や、水、雪、月などの自然、人形や干支など行事のモチーフです。

具体的に月ごとに分けると以下のようになります。ただし前述した通りこれはルールというわけではなくあくまで目安。

普段着ならあまり縛られ過ぎず、自分の着たいものやつくりたいストーリーなど、もっと自由に選んで問題ありません。

1月 松竹梅、干支文様、宝船、
雪持ち文様など
2月 梅、椿、蘭、桃、水仙、
霞など
3月 桃、蝶、菜の花、桜、藤、
菖蒲、霞、人形など
4月 桜、牡丹、柳、流水、霞など
5月 紫陽花、若竹、流水、
雨、花鳥など
6月 紫陽花、百合、雲、
雨、海など
7月 朝顔、夏草、睡蓮、
流水、雲、波など
8月 雲、波、水、祭り模様、
秋の七草模様
9月 秋の七草模様、菊、すすき、
月、笛など
10月 菊、銀杏、紅葉、木の実など
11月 木の実、野菊、実もの、
雁、枯葉散らしなど
12月 寒椿、唐草や更紗、南天
冬景色など

ここからは実際の季節ごとに選んで着たいおすすめの着物の柄と、その柄に込められた意味を紹介します。

春|桜、牡丹、藤、桃、菖蒲などの季節を感じる花

鎗梅

春は色とりどりの美しい花々が、一斉に咲き誇る季節です。春を代表する桜や牡丹などの植物柄を取り入れた、爽やかなパステルカラーの着物がよく似合います。

<桜>

桜は、古くから多くの人に親しまれてきた日本を代表する春の花で、着物の柄としても多くの用いられています。

桜が咲く季節は3月~5月なので桜柄の着物の着用シーズンはは2月の後半から3月後半ころまでがおすすめです。

さらに、1月の後半には「つぼみ」の状態の桜を、実際に桜がつぼみを付け始める3月後半頃には「満開」の桜、桜が咲き始めたら「ちり際の桜」をと桜の開花状況に合わせて着物の柄を選ぶと、ストーリー性を演出することもできます。

<牡丹>

牡丹は、4~5月の春の季節に花を咲かせます。

大輪の花を咲かせる牡丹は、その豪華な見た目から「花の王様」とも呼ばれ、幸福や富の象徴を意味します。

牡丹柄の着物のおすすめの季節は、2月中旬頃から3月下旬頃です。

<藤>

古くから日本に自生する藤は、桜の季節が終わる4月~5月に咲く花です。優雅で柔らかく、どこか涼し気な印象の藤はとても見ごたえがあり、春の着物の柄として多く取り入れられています。

繁殖力が強く、他の樹木にからみながら伸びていく藤は、長寿、子宝繁栄の象徴です。また、花の咲いている様子が稲穂に似ていることもあり、豊作を願う意味も込められています。

藤柄の着物は、牡丹と同じく2月中旬ごろから3月下旬頃がおすすめの着用シーズンです。

夏|紫陽花、朝顔などの花や、雲、流水などの涼しげな模様

流水

夏には、紫陽花、朝顔等の夏の植物を用いますが、涼しさを演出するために、あえて雪や南天等の冬のモチーフを選ぶこともあります。

<紫陽花>

梅雨から夏にかけて花を開く紫陽花柄は、古くからある日本固有の花です。紫陽花柄は着物だけではなく、浴衣の柄としてもよく用いられます。

長雨に負ける事無く花を咲かせ続ける様子から、強い愛情の象徴として、また花が集まっている様子から家族団らんも意味します。

紫陽花柄の着物は、梅雨前の新緑の季節がおすすめです。

<朝顔>

夏といえば朝顔、浴衣の柄としても最も多く用いられています。ツルがしっかり巻き付く様子から、「結びつきが強い」という意味を持っています。

季節のイメージが夏に限定される柄なので、夏の時期だけに限定して着ましょう。朝顔がまだ花を開かない初夏の頃が着用のおすすめシーズンです。

秋|紅葉、桔梗、菊、葡萄、月などの秋らしいモチーフ

吹き寄せ

9月の下旬ごろから着物の柄も段々と秋の装いへと変えていきましょう。

枝葉が綺麗に色付く紅葉のシーズンに合わせて、紅葉や銀杏などの柄の描かれた、茶色や辛子色などの渋い色の着物をチョイスするのがおすすめです。

<紅葉>

秋の代表格といえば紅葉です。一般的に、定番の銀杏や松葉に木の実などが一緒に描かれています。

紅葉が始まるシーズンは地域によって異なりますが、夏の終わり頃に紅葉柄の着物を着る事で、秋の訪れを演出しましょう

<桔梗>

桔梗は秋の初めに咲く紫色の花です。

凛として大人気な印象で、夏の終わり頃の着物や、浴衣に人気の模様です。まだ残暑の厳しい8月中旬から9月初旬に着ることで、涼し気な秋を先取りします。

冬|南天、松竹梅、椿や、冬景色などの風景模様

まつ

寒く厳しい冬の季節こそ、これから到来する春が待ち遠しいもの。自然界の色が少なる季節に、あえて華やかな色合いの柄を選び、着物で春の雰囲気を演出しましょう。

<南天>

冬に赤い実を付ける南天は、松竹梅とともに正月飾りに用いられます。
「難を転ずる」という語呂合わせから厄除けとしても使われ、古くから縁起の良いものとされてきました。

また、昔は薬として使われていた事から薬効にちなんで吉祥文(おめでたいもよう)としてお祝い事に用いられたりもしました。

南天柄の着物は10月後半から12月くらいに着るのがおすすめです。

<松竹梅>

松竹梅は、吉祥文様の中でも特に有名なもので、とても縁起の良い柄の一つです。

松、竹、梅それぞれが冬の厳しい寒さに耐えることから、忍耐強い様子を象徴した文様で、「つらい時期を耐え努力を続ければ、いつか美しい花を咲かせる」という意味が込められています。

季節的には正月頃がおすすめですが、大変おめでたい柄なので、婚礼衣装や、振袖、留袖、訪問着など、格の高い着物にも多く取り入れられていて、基本的には通年着ることができます

<椿>

椿は、春の到来を告げる木です。1月下旬から2月に椿柄の着物を選んで着ることで「厳しい冬を乗り越えれば、春はもうすぐそこ」という春の訪れを予感させてくれます。

また椿は、樹齢が800年もあり、不老長寿の象徴としても縁起の良い模様です。見た目の華やかさとは違い、花の香りがしないので、控え目な印象も演出してくれます。

椿の開花時期は地域によって違いますが。1月2月頃が着用のおすすめシーズンです。

季節を問わない通年使える柄もある

着物の柄の中には、季節を問わず通年使える柄もあります。また季節を代表する植物や花でも、他の季節の植物と一緒に描かれていたり、デザイン化されたものは通年着る事ができます。以下詳しくみていきましょう。

吉祥文様

吉祥文様

「吉祥文様(きっしょうもんよう)」とは、日本の伝統的な文様の中でも、特にめでたく、縁起のいいものや、動植物などをモチーフにしている文様の総称です。

主に礼装用の柄として、着物の中では花嫁衣装や格の高い留袖や訪問着、振袖などに使われます。吉祥文様の代表格は「松竹梅」で、他にも「鶴」「亀」「鳳凰」「龍」等様々な模様があります。

有職文様

七宝

有職文様(ゆうそくもんよう)は、平安時代に中国から伝来し日本に定着した文様で、独自の優美さを持つ柄の総称です。

有職(ゆうそく)とは、平安時代の宮中の儀式や行事にたずさわる学者や知識者層のことで、「有職が着る装束に施されていた模様」という所から「有職文様」と呼ばれるようになりました。

有職文様には「七宝(しっぽう)」「立湧(たてわく)」「亀甲(きっこう)」「向い蝶(むかいちょう)」「青海波(せいがいは)」などの模様があります。

唐草、唐花

唐草

唐草模様は、つる草のツルや葉が絡んでいる様子を曲線で表現した模様です。唐草のどこまでもツルが伸びる様子は、強い生命力の象徴で、繁栄、活力を願う意味があります。

また、唐草と花を組み合わせた模様は「唐花」と呼ばれます。唐花は、蓮や牡丹等の数種類の植物を合成して出来上がった「空想の花」です。礼服の柄や帯に用いられ、四季を問わずに見つけられる縁起のよい模様です。

蝶の形の美しさや、宙を舞う姿の可憐さから、吉祥文様(縁起の良い柄)として着物の柄に多く用いられています。

また、青虫からさなぎ、そして蝶へと姿を大きく変える事から、神秘的で不死のシンボルにもなっています。

蝶の模様単独なら季節を問わず通年の着用が可能です。季節の花々と組み合わせて用いられている場合は、花の季節に合わせて着用シーズンを選びましょう。

季節の入り混じったもの

色紙ちらし

同じ着物に季節の違う植物が描かれている場合は、季節を問わず一年を通して着る事ができます。例えば、「松竹梅」と「桜柄」などは、通年着用できる事になります。

「着物は1枚か2枚で十分」と思っている人は、季節を問わず着用できる柄を選べば安心です。

デザイン化されたもの

小菊つめ

季節の花が描かれた着物でも、写実的なものではなく、デザイン化されていたり、パターン化されている柄の着物は季節を問わず着用することができます。

まとめ

着物の模様に目を向けてみると、動物や風景、植物など様々なものが描かれていて、それぞれに「似合う季節」があることが分かりました。

着物の柄の季節感を上手に取り入れて、さらに着物を楽しみましょう。

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