作家ものの着物と聞けば、誰もが一度は憧れますよね。
特に国の宝とされる「人間国宝」の持つ技術で作られた着物は、きっと息をのむ美しさでしょう。
とはいえ、人間国宝の着物作家さんと聞いて思い浮かぶ名前はありますか?合計何人いるかご存じでしょうか?
この記事では、着物に関わる人間国宝とされる方をまとめました。それぞれの作風や特徴を知って、着物の世界を広げてみてください。
もしかしたらあなたの家に代々伝わる着物は人間国宝の作品かも…?
国の重要無形文化財・人間国宝とは
よく耳にする「人間国宝」ですが、その正式な意味を説明できる人は少ないでしょう。まずは、人間国宝について定義や成り立ちなど、理解を深めてみましょう。
重要無形文化財は技術や文化に対し認定される
重要無形文化財とは、無形文化財の中でも特に重要だと認定されたもののこと。
そもそも無形文化財とは、”演劇,音楽,工芸技術,その他の無形の文化的所産で我が国にとって歴史上または芸術上価値の高いもの(文化財保護法第2条1項)”を指します。
建造物、工芸品、歴史資料などの「もの」を指す有形文化財に対し、芸能、工芸技術といった人間の「わざ」そのものを指すのが無形文化財です。
重要無形文化財は、文化財保護法に基づき文部科学大臣によって認定されます。
文化審議会の全国的な調査を受け、専門審議会の検討を経て認定を行っており、申請制度や推薦制度は実施されていません。
重要無形文化財の保持者は『人間国宝』と呼ばれる
人間国宝とは、重要無形文化財に認定された「わざ」を体現する人のことです。
正式には「重要無形文化財の保持者」といい、通称を「人間国宝」と言います。重要無形文化財は複数人や団体も認定されますが、人間国宝と呼ばれるのは一個人に認定された場合のみです。
たとえば喜如嘉の芭蕉布は個人ではなく「喜如嘉の芭蕉布保存会」が保持団体として認定されていといったようなことですね。
令和2年12月現在、工芸技術や芸能などを合わせた人間国宝の数は114名(重複があるので実人数は113名)、14団体。保持団体は16団体います。
人間国宝に認定された技術者は、重要無形文化財の保持や継承を目的とした助成金が支給されます。
着物や帯(染織)の人間国宝一覧
現在染織品で認定されている重要無形文化財の保持者は17名7団体(参考:文化庁)。それに加え今までの人間国宝の方々が手掛けた作品もいまだ数多く残されています。
(それぞれの名称を選択すると、そのページへとびます)
友禅 染め |
友禅 上野為二 |
友禅 木村雨山 |
友禅 田畑喜八 |
友禅 中村勝馬 |
友禅楊子糊 山田栄一 |
友禅 森口華弘 |
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友禅 山口貢 |
友禅 羽田登喜男 |
友禅 田島比呂子 |
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友禅 森口邦彦 |
友禅 二塚長生 |
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型 染め |
長板中形 松原定吉 |
長板中形 清水幸太郎 |
型絵染 芹沢銈介 |
型絵染 稲垣稔次郎 |
型絵染 鎌倉芳太郎 |
紅型 玉那覇有公 |
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木版摺更紗 鈴田滋人 |
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江戸 小紋 |
伊勢型紙 突彫 南部芳松 |
伊勢型紙 錘彫 六谷梅軒 |
伊勢型紙 道具彫 中島秀吉 |
伊勢型紙 道具彫 中村勇二郎 |
伊勢型紙 縞彫 児玉博 |
伊勢型紙 糸入れ 城ノ口みゑ |
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江戸小紋 小宮康助 |
江戸小紋 小宮康孝 |
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織り |
紬縞・絣織 宗廣力三 |
紬織 志村ふくみ |
紬織 佐々木苑子 |
首里織 宮平初子 |
読谷山花織 与那嶺貞 |
芭蕉布 平良敏子 |
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紋紗 土屋順紀 |
紬織 村上 良子 |
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帯 |
羅・有職織物 喜多川平朗 |
有職織物 喜多川俵二 |
羅・経錦 北村武資 |
献上博多織 小川善三郎 |
献上博多織 小川規三郎 |
佐賀錦 古賀フミ |
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綴織 細見華岳 |
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ほか |
精好仙台平 甲田栄佑 |
精好仙台平 甲田綏郎 |
正藍染 千葉あやの |
唐組 深見重助 |
刺繍 福田喜重 |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
友禅染め
友禅染とは、日本を代表する文様染めの技法です。
糊を使って色が混じらないようにすることで、多彩で華麗な絵画のような文様を描くことができます。
江戸時代に発祥した友禅染は、世界に誇る伝統技術です。
友禅|上野為二(読み方:うえのためじ)
京友禅と加賀友禅を融合した「京加賀」という新しい技法を習得し、日本画や西洋画などのさまざまな芸術の観点を取り入れた作風です。
現在は、孫の上野真氏が二代目 上野為二を襲名しています。
・1901年(明治34年)生まれ、1960年(昭和35年)没。
・1955年(昭和30年)人間国宝認定。
友禅|木村雨山(読み方:きむらうざん)
加賀友禅で唯一の人間国宝。
加賀友禅は色や線がはっきりしていることが特徴ですが、木村雨山の作品はやわらかい作風です。動植物の観察力が長けていた雨山は、花や草や鳥といった自然の描写を多く残しています。
・1891年(明治24年)生まれ、1977年(昭和52年)没。
・1955年(昭和30年)認定。
友禅|田畑喜八(読み方:たばたきはち)
田畑喜八は200年以上にわたる歴史を持ち、京友禅を代表する作家です。三代目が人間国宝に認定され、現在も五代目が精力的に活動しています。
代表作は、友禅一越地訪問着「波」、一越縮緬訪問着「秋晴れ」。
・1877年(明治10年)生まれ、1956年(昭和31年)没。
・1955年(昭和30年)認定。
友禅|中村勝馬(読み方:なかむらかつま)
伝統的な友禅の技法と新しい技法を組み合わせることで、独自の力強さを表現しています。黒留袖の作品が多く、「波文黒留袖」「葵文黒留袖」などが有名です。
また、左右非対称なデザインも中村勝馬の特徴で、「かがり文訪問着」などがあります。
・1894年(明治27年)生まれ、1982年(昭和57年)没。
・1955年(昭和30年)認定。
友禅楊子糊|山田栄一(読み方:やまだえいいち)
友禅楊子糊とはその独特な技法によって、髪の毛のような繊細な線から木の幹を髣髴とする力強い線まで、幅広い表現を可能としました。
高度な技法であるため明治以降一度は衰退しましたが、山田栄一によって復興を遂げ、現在も孫の山田崇氏に受け継がれています。
・1900年(明治33年)生まれ、1956年(昭和31年) 没。
・1955年(昭和30年) 認定。
友禅|森口華弘(読み方:もりぐちかこう)
「蒔糊技法」という新しい技術を確立させ、繊細かつ大胆なデザインで人々を魅了してきました。友禅染職人としては遅咲きだったにも関わらず、57歳という若さ人間国宝となった才能あふれる職人です。
息子の森口邦彦氏も人間国宝で、親子で人間国宝という稀有なケースです。
・1909年(明治42年)生まれ、2008年(平成20年) 没。
・1967年(昭和42年) 認定。
友禅|山田貢(読み方:やまだみつぎ)
中村勝馬に師事し、手書友禅や蠟染を学び、のちに独立。大胆な構図に、生き生きとさわやかな色彩を用いる作風です。
能装束や狂言装束の研究を行い、古典文様を好んで描いています。
・1912年(明治45年) 生まれ、2002年(平成14年)12月 7日没。
・1984年(昭和59年) 認定。
友禅|羽田登喜男(読み方:はたときお)
雅な京友禅に力強い加賀友禅を調和した独自の作風を持っています。庭園や自然を愛し、花鳥風月を題材に数多くの作品を残しました。ちなみに、1986年には故ダイアナ妃に振袖を献上しています。
代表作は「鴛鴦(おしどり)」で、多くの人に知られ今なお高い人気を誇っています。
・1911年(明治44年) 生まれ、2008年(平成20年) 没。
・1988年(昭和63年) 認定。
友禅|田島比呂子(読み方:たじまひろし)
輪郭線のない「堰出し友禅」で知られる田島比呂子の作品は、大胆なデザインでありながらも淡い色使いで上品に仕上げられています。
奥行や立体感を感じられるのも特徴で、代表作「ゆりかもめ」は、今にも動きだしそうな印象を与えます。
・1922年(大正11年) 生まれ、2014年(平成26年) 没。
・1999年(平成11年) 認定。
友禅|森口邦彦(読み方:もりぐちくにひこ)
老舗百貨店・三越のショッピングバッグのデザインも手がけた森口邦彦。
フランス・パリで学んだグラフィックデザインと幾何学模様を組み合わせることで、伝統的な友禅だけでなく時代に合わせた作品を探求し続けています。その活動は友禅の可能性を拡げることに大きく貢献しています。
同じく人間国宝の森口華弘を父に持ち、親子で人間国宝という偉業を成し遂げました。
・1941年(昭和16年) 2月18日生まれ。
・2007年(平成19年) 認定。
友禅|二塚長生(読み方:ふたつかおさお)
加賀友禅を学び、のちに糊糸目を主役とした独自の友禅を切り開きました。
模様を白く表現し、「雪」「雲」「滝」といった力強い自然のモチーフを躍動感あふれるダイナミックに描いています。
・1946年(昭和21年) 8月12日生まれ。
・2010年(平成22年) 認定。
型染め
型染めとは、模様を入れる際に型紙を使って染める技術です。
型紙を複数枚用いて色を重ねたり、のりで防染して模様を描いたりと、型染めの中にもさまざまな風合いを出す技法があります。
長板中形|松原定吉(読み方:まつばらさだきち)
たいへん緻密な染色によって、繊細なコントラストが特徴的な作風です。白地に藍染の浴衣に定評があり、その涼しげな浴衣は多くの人から支持されました。
没後数50年以上経っており、今では非常に希少な作品となっています。
・1893年(明治26年)生まれ、1955年(昭和30年)没。
・1955年(昭和30年)認定。
長板中形|清水幸太郎(読み方:しみずこうたろう)
化学染料などを用いて合理的に着物を作ろうという時代にも、すべて手作業の伝統技法を貫き通した作家です。
卓越した技術と努力で、「本当に人の手で作られたものか」と思われるほど精巧で上品な作品に仕上がっています。
・1897年(明治30年) 生まれ、1988年(昭和63年)没。
・1955年(昭和30年) 認定。
型絵染|芹沢銈介(読み方:せりざわけいすけ)
見えるモノを模様としてとらえる才能があった芹沢銈介は、大胆なモチーフながらも親しみを感じる作品を多く残しました。
文字を模様化した「文字絵」を創作し、文字の形や色、組み合わせる草花や動物などオリジナリティーあふれています。
有名な作品のひとつに「いろは文字帯地」があり、多くの文字と多彩な色でにぎやかな雰囲気です。
・1895年(明治)生まれ、1984年(昭和)没。
・1956年(昭和)認定。
型絵染|稲垣稔次郎(読み方:いながきとしじろう)
型染めの特徴を活かした独創的な作風です。
京都の自然や風景をモチーフに取り入れた作品が多いのが特徴で、代表作には「竹林図着物」や「紅葉と秋草模様着物」などがあります。
・1902年(明治)生まれ、1963年(昭和)没。
・1962年(昭和)認定。
型絵染|鎌倉芳太郎(読み方:かまくらよしたろう)
いくつもの文様が重なり合い、立体感のある幻想的な型染めが特徴的な作風です。
さらに、廃れかけていた琉球紅型を継承し、多くの琉球文化を調査・記録した活動は、戦後の首里城復元はじめ琉球文化の再興に大きく役立ったとされています。
・1898年(明治31年)生まれ、1983年(昭和58年) 没。
・1973年(昭和48年) 認定。
紅型|玉那覇有公(読み方:たまなはゆうこう)
戦後の紅型復興に多大な功績を残した城間栄喜のもとで、紅型の命といわれる型紙彫りを修得しました。
南国特有の色使いやデザインに、緻密さと精巧さを感じられる作風です。通常紅型は片面染めですが、玉那覇有公は裏地まで美しい両面染めを得意としています。
・1936年(昭和11年)生まれ。
・1996年(平成 8年) 認定。
木版摺更紗|鈴田滋人(読み方:すずたしげと)
木版と型紙を組み合わせた技法で清新な幾何学文様を表現する鈴田滋人は、まさに現代の更紗を創作したといえます。
淡い色使いで、はっきりとした文様にも関わらず柔らかい印象を与えてくれます。
・1954年(昭和29年) 生まれ。
・2008年(平成20年) 認定。
江戸小紋
江戸小紋とは、小紋の中でも小さい柄を全体にあしらったもので、遠目からみると無地に見える大変繊細なものです。
江戸小紋では、わずかなズレも許さない染めの技術や、代名詞ともいえる極小の模様を作り出す型紙制作のわざなどが重要無形文化財として指定されています。
伊勢型紙・突彫|南部芳松(読み方:なんぶよしまつ)
彫刻刀や小刀を使って重ねた和紙を彫っていく「突彫」という技術の第一人者です。尽彫は、なめらかな曲線から鋭角的な線までを表現できるので、絵画のような繊細な絵柄ができます。
南部芳松の残した型紙は現在も使われていますが、経年劣化によって年々希少となってきています。
・1894年(明治27年)生まれ、1976年(昭和51年)没。
・1955年(昭和30年)認定。
伊勢型紙・錘彫|六谷梅軒(読み方:ろくたにばいけん)
鮫小紋や通し小紋など緻密な文様を得意とし、さらに細かい極鮫小紋を究め、人間国宝に認定されました。
小さな点の連続や大小で文様を表現する錐彫は、浮き出てくるような幻想的な文様を作り出します。
・1907年(明治40年)生まれ、1973年(昭和48年)没。
・1955年(昭和30年)認定。
伊勢型紙・道具彫|中島秀吉(読み方:なかじまひできち)
道具彫りでは、二枚の刃を合わせて扇や角、花びらの形の刃物(道具)を作り、型紙を彫っていきます。さまざまな形の道具を使うことで文様に多様性が生まることが特徴です。
中島秀吉の卓越した技術は、本当に手仕事のものなのかと思えるほど精巧です。
・1883年(明治16年) 生まれ、1968年(昭和43年) 没。
・1955年(昭和30年) 認定。
伊勢型紙・道具彫|中村勇二郎(読み方:なかむらゆうじろう)
3000本以上の刃物(道具)を自ら作り、型紙を制作した中村裕次郎。多くの道具を使って自在に文様を彫り、表現の幅を広げてきました。
非常に緻密な文様ながらも、全体としては大きなデザインが特徴的です。皇室に献上し続け、その技術を「神業」と称されたことも。
・1902年(明治35年) 生まれ、1985年(昭和60年)没。
・1955年(昭和30年) 認定。
伊勢型紙・縞彫|児玉博(読み方:こだまひろし)
正確で精緻を究めた児玉博の縞彫は、今でも高い人気があります。一見無地に見えるほど、細かい縞模様は、シンプルな上品さをかもし出します。
・1909年(明治42年)生まれ、1992年(平成4年)没。
・1955年(昭和30年)認定。
伊勢型紙・糸入れ|城ノ口みゑ(読み方:じょうのぐちみえ)
型紙の細い筋の部分を補強するために糸を貼る工程を糸入れといいます。
型紙作りには欠かせない高度な糸入れという技術を専門にしてきた城ノ口みゑは、まさに職人にとって縁の下の力持ちでした。
・1917年(大正6年)生まれ、2003年(平成15年)没。
・1955年(昭和30年)認定。
江戸小紋|小宮康助(読み方:こみやこうすけ)
伝統に囚われず、化学染料を用いたり、花や文字を取り入れたりと、独創的な作風です。
特に「しごき」という色糊を用いた地染めの技法で、生地の両面に異なる色を染め上げるわざを開発したことにより、以降の江戸小紋の表現の幅がぐっと奥深いものとなりました。
・1882年(明治15年) 生まれ、1961年(昭和36年) 没。
・1955年(昭和30年) 認定。
江戸小紋|小宮康孝(読み方:こみややすたか)
「江戸小紋」という名称を考案した小宮康孝。
父・小宮康助に学び、染料や型紙の素材にこだわりぬいた作品を作ってきました。時が経ても色焼けすることなく、いつまでの鮮やかな色を放っているのが最大の特徴です。
・1925年(大正14年)生まれ、2017年(平成29年)没。
・1978年(昭和53年) 認定。
織り
織りの着物とは、糸を染色してから織りあげるという工程で作られた着物です。紬の他に御召や木綿、ウールの着物も織りの着物です。
織りの着物はカジュアルシーンに着用されますが、手作業で丁寧に紡がれた作品はとても贅沢なものとして着物愛好家の憧れでもあります。
紬縞・絣織|宗廣力三(読み方:むねひろりきぞう)
岐阜県の郡上紬を再興し、紬では初めて人間国宝に認定された人物として知られる宗廣力三。
独自に開発した「どぼんこ染め」という技法を用いて、より一層あたたかみのある郡上紬を作り出しました。
郡上紬の中でも宗廣力三の作品は、希少で高価なものとされています。
・1914年(大正 3年) 生まれ、1989年(平成 元年)没。
・1982年(昭和57年) 認定。
紬織|志村ふくみ(読み方:しむらふくみ)
多種多様な草木から染め出した糸を用いて、紬織に無限の色を取り入れています。自然のものから染め出したとは思えないほど、色とりどりで柔らかい雰囲気を持つ作風。
代表作には、「秋霞」「月の出」「半蔀」などがあり、独創的な美を表現した作品です。
・1924年(大正13年)生まれ。
・1990年(平成2年)認定。
紬織|佐々木苑子(読み方:ささきそのこ)
静岡や島根など各地域の技法を学びながら独自の作風を作り上げた佐々木苑子。
自然の色を最大限活かすことに定評があります。また、紬に絵絣の技術を取り入れるというオリジナリティも評価されています。
・1939年(昭和14年) 生まれ。
・2005年(平成17年) 認定。
首里織|宮平初子(読み方:みやひらはつこ)
首里織の中でも、光を通すほどに薄くて透き通る花倉織を中心に制作。
沖縄の自然から抽出した色を大胆に用いて、目を引くようなきれいなグラデーションが特徴的です。
・1922年(大正11年)生まれ。
・1998年(平成10年)認定。
読谷山花織|与那嶺貞(読み方:よなみねさだ)
600年の歴史を持ちながらも絶滅寸前だった読谷山花織を再興させた功績の持ち主。55歳から本格的に織物に取り組み、90歳で人間国宝となった努力の人でもあります。
読谷山花織は裏に浮き糸が出るのが特徴で、わずかに厚みがありあたたかみを感じられます。
・1909年(明治42年)生まれ、2003年(平成15年)没。
・1999年(平成11年)認定。
芭蕉布|平良敏子(読み方:たいらとしこ)
芭蕉布を作るには、糸芭蕉の栽培から織りに至るまで大変な手間と根気がいる技術です。
平良敏子の作る芭蕉布は、すべての材料とすべての工程を沖縄県喜如嘉で作られ、しなやかな風合いは世界にも類をみません。
・1921年(大正10年) 生まれ。
・2000年(平成12年) 認定。
紋紗|土屋順紀(読み方:つちやよしのり)
志村ふくみに師事。鮮やかで涼し気な風合いと通気性が良いことから夏の着物として重宝されてます。
まるで光が差し込んだような輝きに誰もが息を飲むことでしょう。
・1954年(昭和29年) 生まれ。
・2010年(平成22年) 認定。
紬織|村上 良子(読み方:むらかみりょうこ)
志村ふくみに師事。草木染めにより生まれる透明感ある色彩と、さらにそれを大胆な構成で配置しているのが特徴です。
単なる幾何学にとどまらない、自然をモチーフにしたグラフィカルなデザインは飽きの来ない美しアを持っています。
・1949年(昭和24年) 生まれ。
・2016年(平成28年) 認定。
帯
帯合わせは、着物コーディネートの肝といっても過言ではありません。着物だけでなく帯の人間国宝作品も紹介します。
羅・有職織物|喜多川平朗(読み方:きたがわへいろう)
京都西陣の由緒ある機屋、俵屋の十七代目当主。
有職織物とは朝廷をはじめ公家の間で装束や調度に使用されていた織物のことで、品格の漂う存在感は日本の美の原点といえるでしょう。
喜多川平朗は、有職織物の技術を研究し復元させた功績を持ちます。また、室町時代以降失われていた羅という複雑な織物も復元させました。控えめながらも上品な風合いの作風です。
・1898年(明治31年) 生まれ、1988年(昭和63年)没。
・1956年(昭和31年) 「羅」、1960年(昭和35年)「有職織物」において認定。
有職織物|喜多川俵二(読み方:きたがわひょうじ)
喜多川平朗の次男で、俵屋十八代目当主。
父のもとで学び類まれなる色の感性を体得した喜多川俵二の作品は、優雅な上品な色合わせで誰しもを感嘆させます。「俵二の作った色が好きや」と父・平朗にも認められた感性の持ち主。
現在は皇室の儀式用装束や伊勢神宮の御神宝などの制作もしています。
・1936年(昭和11年)生まれ。
・1999年(平成11年)認定。
羅・経錦|北村武資(読み方:きたむらたけし)
素材や手法によってさまざまな種類のある織物を、基本は同じという本質的な視野で捉えて取り組む作家です。機をいかにコントロールするかを重視し、経糸と緯糸のリズムを操り、独特の風合いを生み出しています。
代表作には、ごく小さい入子菱が織り込まれた袋帯「煌彩錦」があります。
・1935年(昭和10年) 生まれ。
・1995年(平成 7年)「羅」、2000年(平成12年)「経錦」において 認定。
献上博多織|小川善三郎(読み方:おがわぜんざぶろう)
格別な技術力はもちろんのこと、草木染によるやさしい色使い、手織りによるあたたかみのある風合いが特徴。
薄くて淡い色の作品は、どんな着物にも合わせやすく上品さを加えられるので、とても人気です。
・1900年(明治33年)生まれ、1983年(昭和58年)没。
・1971年(昭和46年)認定。
献上博多織|小川規三郎(読み方:おがわきさぶろう)
小川善三郎を父に持つ、現在博多織の最高峰とも言われる小川規三郎。手に取った時の重厚感や品格はまさに本物を感じさせます。
機械化や分業化が進んでいる昨今、手織りを貫きあたたかみのある博多織を制作しています。
・1936年(昭和11年)生まれ。
・2003年(平成15年) 認定。
佐賀錦|古賀フミ(読み方:こがふみ)
金箔や銀箔を経糸に、色とりどりに染色された絹糸を緯糸に用いた、非常にきらびやかな佐賀錦。佐賀錦の伝統を守りながらも、現代風のセンスや色使いで新しい美しさを表現しています。
着物や帯だけでなく、バッグや笛袋などの小物類にも用いられてきました。
・1927年(昭和 2年)生まれ、2015年(平成27年)没。
・1994年(平成 6年)認定。
綴織|細見華岳(読み方:ほそみかがく)
「爪掻き綴織り」という、自身の爪で糸を一本ずつ刺繍するようにはめ込む技法で、絵画のように繊細な文様を織りなします。華美ではない落ち着いた色で、限られた色数の中で、儚げで上品な作風です。
代表作には、袋帯の「友愛」「よろこび」「陽光」などがあります。
・1922年(大正11年)生まれ、2012年(平成24年)没。
・1997年(平成9年認定。
その他
男性の袴や、帯締め、刺繍なども染織の重要無形文化財として指定されています。
精好仙台平|甲田栄佑(読み方:こうだえいすけ)
宮城県仙台市に伝わる精好仙台平は、主に男性礼服の袴地として重宝されてきました。
甲田栄佑は無撚先染織という技術を開発し、強度が高く品格もある作風で男性礼服の最高峰として評価されています。
・1902年(明治35年)生まれ、1970年(昭和45年)没。
・1956年(昭和31年)認定。
精好仙台平|甲田綏郎(読み方:こうだよしお)
丈夫ながらも美しいなめらかさがある甲田綏郎の精好仙台平。フィギュアスケートの羽生結弦選手が国民栄誉賞授与式に着用した紋付き袴も手がけました。
現在は、甲田綏郎が継承する合資会社仙台平のみが仙台平を制作しています。
・1929年(昭和4年)生まれ。
・2002年(平成14年)認定。
正藍染|千葉あやの(読み方:ちばあやの)
最古の染色技術といわれる正藍染の唯一の人間国宝です。
千葉あやのの正藍染は自然発酵を用いているので、素朴でやさしい風合いの作品ができます。
すべてを一人で行っていることや制作できるのは初夏のみということから、現在稀少性が大変高くなっています。
・1889年(明治22年)生まれ、1980年(昭和55年)没。
・1955年(昭和30年) 認定。
唐組|深見重助(読み方:ふかみじゅうすけ)
組紐の一種である唐組は、菱文に組んだ平らな紐で、現在は女性の帯締めとして多く使われています。
深見重助は唐紐に用いる染色から自身で行い、作り出す精緻さと美しさは高く評価されてきました。帯や帯締め、羽織紐といった作品を多く残しています。
・1885年(明治18年)生まれ、1974年(昭和49年)没。
・1956年(昭和31年)認定。
刺繍|福田喜重(読み方:ふくだきじゅう)
絶妙なグラデーションを用いて、繊細で流れるような表現力が素晴らしい刺繍作家です。40万色以上もの幅広い色のバリエーションを持ち、奥行を感じさせるのも特徴的です。
・1932年(昭和7年)生まれ。
・1997年(平成9年)認定。
人間国宝の作品の買取相場の目安
作家もの、とりわけ人間国宝の作品は大変人気があるため、買取でも高く評価されます。
買取額は着物の状態や柄にも左右されるため一概には言えませんが、おおまかな目安として確認していきましょう。
友禅 | 上野為二 | 10,000円~200,000円程度 |
木村雨山 | 30,000円~200,000円程度 | |
田畑喜八 | 40,000円~200,000円 | |
中村勝馬 | 20,000円~100,000円 | |
山田栄一 | 30,000円~数十万円 | |
森口華弘 | 150,000円程度 | |
山田貢 | 10,000円~100,000円 | |
羽田登喜男 | 100,000円~ | |
田島比呂子 | 10,000円~50,000円程度 | |
森口邦彦 | 100,000円~200,000円程度 | |
二塚長生 | 50,000円~200,000円 | |
型染 | 松原定吉 | 50,000円~ |
清水幸太郎 | 20,000円~ | |
芹沢銈介 | 数万円~100,000円程度 | |
稲垣稔次郎 | 50,000円~300,000円程度 | |
鎌倉芳太郎 | 10,000円~300,000円程度 | |
玉那覇有公 | 70,000円~150,000円程度 | |
鈴田滋人 | 20,000円~100,000円程度 | |
江戸小紋 | 南部芳松 | 10,000円程度 |
六谷梅軒 | 20,000円~ | |
中島秀吉 | 10,000円~ | |
中村勇二郎 | 10,000円~50,000円 | |
児玉博 | 20,000円~100,000円 | |
小宮康助 | 50,000円~100,000円 | |
小宮康孝 | 50,000円~150,000円 | |
織り | 宗廣力三 | 100,000円程度 |
志村ふくみ | 200,000円~ | |
佐々木苑子 | 100,000円~ | |
村上 良子 |
50,000円~数十万円 | |
宮原初子 | 150,000円程度 | |
与那嶺貞 | 70,000円~100,000円 | |
平良敏子 | 100,000円~ | |
土屋順紀 | 100,000円~ | |
帯 | 喜多川平朗 | 70,000円~200,000円 |
喜多川俵二 | 10,0000円~ | |
北村武資 | 100,000円~200,000円 | |
小川善三郎 | 50,000円~200,000円 | |
小川規三郎 | 50,000円~200,000円 | |
古賀フミ | 100,000円程度 | |
細見華岳 | 100,000円~ | |
ほか | 甲田栄佑 | 10,000円~100,000円 |
甲田綏郎 | 10,000円~100,000円 | |
千葉あやの | 100,000円~ | |
深見重助 | 帯締めひとつで数千円~一万円 | |
福田喜重 | 70,000円程度~ |
人間国宝の作家ものの着物が高価買取となるポイント
作家ものの着物は貴重であるため需要が高く、買取価格も自ずと高額になります。
ただし査定にはいくつかポイントがあるため、どんな着物だと高く買い取ってもらえるのか、どんなことに気を付ければよいのか、以下の4点をおさえておきましょう。
- サイズは大きいものの方が高く売れやすい
- シミや汚れ、生地の傷みがなく保存状態がいいほど価値が高い
- 証紙、落款など着物の価値を証明する付属品は必ず見せる
- 専門の買取業者に見てもらうのが何より大事
知らないと大損する可能性もあるので、買取に出す前にしっかりと確認しましょう。
サイズは大きいものの方が高く売れやすい
着物のサイズについては、大きいものの方が高価買取されます。
というのも着物は着る人に合わせて仕立て直すことが一般的なもの。
大きいものを小さくすることは割と簡単にできる上、おはしょりなどで調節も可能ですが、逆に着物が小さい場合は、縫い代部分に生地が余っていないと広げて大きくすることは難しくなってしまいます。
大きいものの方が融通が利く分買い手が付きやすいので、高価買取が期待できます。
シミや汚れがなく保存状態がいいほど価値が高い
シミや虫食いなどについては、表や裏に関係なく、ひとつでもあれば査定価格に影響が出ます。
伝統工芸品の着物のなかには自宅での手入れが難しいものもあるので、専門のクリーニングに出してあげるのがいいでしょう。
専門の買取業者では、シミ抜きで取れる汚れかどうかも判断してくれ、それを加味した価格をつけてくれます。
よっぽどひどい状態でなければ買取不可とはならないので、クリーニングに出せない、伝手が無くて適切なクリーニング業者がわからないというときはそのまま見せてしまいましょう。
無理に自分でシミ取りをすることは、むしろ着物の価値を下げることになるので絶対NGです。
ただし買取業者に見せる前にも、最低限陰干しをしておくのがベター。
余分なシワや防虫剤などのにおいがとれて、印象が良くなり買取額アップが見込めます。
証紙、落款など着物の価値を証明する付属品は必ず見せる
証紙や落款は高価買取のキーポイント。
証紙とは、簡単にいうと品質証明書のようなものです。着物の素材や産地、織り方、染め方などが記載され、「この着物は高級品である」と保証してくれます。
たとえば伝統工芸品に指定されているものには、「伝」の文字と日の丸をあしらった国の伝統工芸品マークがつけられています。
証紙が付属している場合は、大切に保管し査定時は必ず提出しましょう。
また、落款とは、着物作家のロゴマークのようなものです。着物作家には独自の落款(ロゴマーク)を持っている場合があり、着物を手がけた際に「自分が仕立てたものである」と証明するために刻印します。
有名な作家であればその価値を証明することができ、類似品と見分けることもできます。落款はおくみか襟先にあることが多いです。
ただし、ない場合でも即偽物というわけではありませんし、買取してもらえないわけでもありません。保存状態によっては高価買取をねらえるので、あきらめずに買取に出してみましょう。
専門の買取業者に見てもらうのが何より大事。できれば複数の業者に見積もりを
着物を売る方法はいくつありますが、高額買取されやすいのはやはり専門の買取業者です。着物専門の査定士は、実績も豊富なので大切な着物を正しく評価してくれ、安く買いたたかれてしまう心配がありません。
買取業者に依頼したい場合、インターネットや電話での査定依頼が簡単です。査定は自宅や店頭宅配などの種類があるので、予定に合わせて選ぶこともできます。
査定価格に同意すれば、その場で買い取ってもらえるので手間もなし。もし買取価格に納得できなくても、査定自体は無料なので損になることはありません。
またできれば一社ではなく複数の業者に査定を依頼するのも、より高く買い取ってもらえるポイントになります。
おすすめ買取業者|バイセル
バイセルの基本情報 | |
キャン ペーン |
最大現金10万円 プレゼント ※5,000円以上の買取 (抽選5名/宅配は対象外) |
買取方法/ エリア |
出張買取:全国 持込買取:13か所 宅配買取:全国 (一部離島除く) |
申込方法 | インターネット 電話 |
受付時間 | 24時間365日 (訪問は9時~17時) |
買取額の 支払い |
出張買取:その場現金 持込買取:その場現金 宅配買取:約2営業日以内銀行振込 |
公式サイト | 公式サイト |
バイセルは2年連続「出張買取顧客満足度一位」の実績ある着物買取業者。
全国対応の出張買取がメインで、北海道から沖縄まで最短即日で査定をしてくれます。
出張費や査定料は当然無料で、少量の着物でも査定が可能。逆に大量に着物を売りたいときも、着物専用倉庫を持っているバイセルならば無料で引き取ってもらえます。
ただし持ち込み買取の場合、当日持ち込み可能な店舗数は、名古屋栄セントラルパーク店、横浜元町店、有楽町店、東京本社(要予約)の4店舗と少ないので要注意。
おすすめ買取業者|福ちゃん
福ちゃんの基本情報 | |
買取金額20%UP (宅配・持込は対象外) |
|
買取方法/ エリア |
出張買取:全国対応 持込買取:11か所 宅配買取:全国対応 |
申込方法 | インターネット、LINE 電話 来店(予約不要) |
受付時間 | 9:00~20:00 ※年末年始を除き無休 来店の場合は、店舗により異なる |
買取額の 支払い |
出張買取:その場現金 持込買取:その場現金 宅配買取:1~5 営業日後銀行振込 |
公式サイト | 公式サイト |
福ちゃんは600万件もの買い取り実績のある着物買取店。
出張、宅配、持ち込みの買取査定が可能です。ただし店舗数は少なめでエリアが限られているため、店舗の無い地域では出張買取か、宅配買取を選ぶようにしましょう。
また、メールやLINEを使った簡易査定もできるので、実際の査定を依頼する前に目安を知りたい、他の業者との見積もりを比較したいというときにも便利に使えます。
まとめ
重要無形文化財に指定されたわざはどれも日本の誇るべきものばかり。
そんな魅力の詰まった一着を手放すなら、納得のいく形で大切な人のもとへ届けられる方法が一番です。
しっかりとした専門知識を持つ査定士に見てもらい、適切な価格で買取してもらいましょう。