普段着慣れていない着物や浴衣は、脚回りに何枚も布があったり、一箇所を引っ張ると全体が着崩れてしまったりと、時に動きにくく感じるもの。
特にトイレの時は、無事に済ますことができるのか、不安で気になってしまう方も多いのでは?
今回は着物や浴衣を着た時の、上手なトイレの仕方を紹介。
女性・男性別に、さらには袴でのトイレのコツまでまとめました。各ポイントはもちろん、便利グッズもぜひ参考にしてみてください。
コツさえ掴めば、和装でのトイレも安心です。
着物・浴衣時のトイレの仕方
着物や浴衣を着ている時、トイレは落ち着いて手順を1つずつ追っていけば意外に心配要らず。
基本は同じ流れですが、男女や各着用アイテムによって少しずつポイントが異なってきますので、事前に確認しておきましょう。
ちなみに、どの場合も和式より洋式トイレの方が、安心して済ませることができるので、慣れないうちはなるべく様式トイレを利用するのをお忘れなく。
女性の場合
女性の場合は、ロングスカートを履いた時と同じイメージ。
ただし布が折り重なっているため、一枚ずつ丁寧に扱うのがポイントです。
それでは通常の着物や浴衣の場合と、袴を着用している場合のトイレの仕方を見てみましょう。
着物・浴衣の場合
着物の時は、基本的に上前→下前の順番で、着物→長襦袢→肌襦袢をそれぞれ裾から1枚ずつめくっていきます。
上前(一番外側の着物や襦袢)は左手で、下前(上前の下にある内側の着物や襦袢)は右手でめくり、最終的には両手に3枚ずつ布を持ちます。一番下の肌襦袢で布を包み込むイメージです。
次に、片手に全ての裾をまとめて、前からグッと腰より高い位置まで着物をあげましょう。ヒップが見えるくらいが目安です。この状態で、そのまま便座に腰掛けることができます。
もし肌襦袢の代わりに、スリップなどのスカート状の肌着を着ているのであれば、初めからスカートで着物と長襦袢を包むように持ち上げても大丈夫です。
浴衣の時なら、浴衣→肌襦袢の裾を順番に持ち上げればいいので、やり方は襦袢がないだけでほとんど同じです。
振袖+袴の場合
卒業式などで人気の袴姿の場合は、ポイントが異なります。
まず袴姿の場合、着物は振袖や二尺袖といった袖丈の長いタイプを着ることが多いため、両袖の袂をまとめて袴下帯の中に入れ込みましょう。
次に、袴の裾を持ち上げ、前に集めてまとめ、こちらも帯に入れ込みましょう。ロングスカートと同じ作りなので、この行程は勢いよく進めても大丈夫です。ただし、下向き加減のまま集中すると、ファンデーションが衿元につきがちなので注意してください。
この状態で、着物の裾が見え、両手は自由になっています。着物は左手で上前裾を、右手で下前裾を順番にめくり、帯の横部分に入れ込んでください。これで、長襦袢のみが見えている状態になります。
あとは着物を着ているときと同様、長襦袢や肌襦袢を上前→下前の順にめくって包み込み、帯に入れ込んで、用を足しましょう。帯に入れ込んだ裾が落ちてこないように、段階ごとに裾と帯をクリップで留めると安心です。
狭い個室は袴の裾が便器に触れてしまったり、動きにくくスムーズに向きを変えられなかったりするため、汚れないように注意してくださいね。
トイレ後の着崩れチェックポイント
用を足した後は着物をめくった順に一枚一枚おろしていきます。
しかしどんなに丁寧にまくっていても、着物や襦袢がずれて着崩れしてしまうのはよくあること。
トイレ後は以下のポイントをよく確認しておくといいでしょう。
- 襟元がきちんと左右対称になっているか
- お尻の部分がたるんでいないか
- おはしょりが乱れていないか
- 帯結びが崩れていないか
- お太鼓のたれ先がめくれあがったり落ちていないか
それぞれのポイントについて詳しく見ていきます。
どんな時でも崩れやすいのは衿元です。特に、襦袢を着ている時は、着物の衿から襦袢の衿が左右対称に見えているか確認しましょう。崩れている時は、左手で身八ツ口から下前を引っ張り、右手で上前の衿先を引っ張ること左右を調整することができます。
座ると腰紐が緩み、お尻の部分で着物がたるみがちです。袴を履いていない時は、たるみが外から見えるので、両手で背中心のおはしょりの内側から後身頃を引っ張りましょう。
おはしょりが凸凹していたり斜めになったりしていないかチェックしましょう。整える時は中心から外側に向かって、少しずつ下向きに引っ張ると良いでしょう。
結び目は座った時や、お尻のたるみを直す時にズレることがあります。
また、おはしょりを引っ張ると、帯位置が全体的に下がっていることでしょう。そんな時は、後ろに手を回して帯の下から指を滑り込ませ、グッと押し上げてください。同じように、前も帯の下から押し上げて直しましょう。
また、お太鼓の場合はタレ先が落ちたりめくれていないか確認しましょう。特に短い帯を使っている場合はタレ先の部分は落ちやすいため、着付けの段階で、予め仮紐を使って固定しておくと心配いらずになります。仮紐は帯の中にしまってしまえば、外から見えることもありません。
男性の場合
男性の場合は袴の着用有無によって手順が少し変わります。それぞれ見ていきましょう。
着物・浴衣の場合
男性の着物や浴衣でのトイレの仕方は、女性と比べると比較的簡単です。しかし、和装の男性には大でも小でも個室に入ることをオススメします。
まず個室に入ったら、上前→下前の順番で、着物→長襦袢をそれぞれ裾から1枚ずつめくり、片手でまとめて持ちます。この時に、後ろから見ると脚が露わになっているので、見た目があまり良いとは言い難い点が、個室利用が無難な理由です。
帯が腰骨の位置にあるため、下着が帯の下に挟まっていることもしばしば。その場合は、もう片方の手で帯を少し上にずらしてみましょう。次に下着を下ろせば、用がたせます。
袴の場合
男性の袴には、行灯袴(ロングスカート状)と馬乗袴(キュロット状)があります。現代の男性袴は、ほとんどが行灯袴です。
行灯袴の場合は、まず裾をめくり両手で前にまとめて、片手で持ちます。次に、着物の時と同じように上前→下前の順番で、着物→長襦袢をそれぞれ裾から1枚ずつめくり、片手でまとめて持ちます。もう片方の手で下着を下ろして用を足しましょう。
馬乗袴の場合は、やや手順が異なります。
キュロット状の馬乗袴は中仕切りがあるため、そのままめくって用を足すことができません。そのため、袴の右脇から手を入れて中仕切りを抑え、右脚を左側に入れてください。これで両脚が片側に入ります。あとは行灯袴と同じように、まとめれば用を足すことができます。
ちなみに、左側に両足をまとめるのは、馬乗袴は左側が大きく作られていることが多いためです。
トイレ後の着崩れチェックポイント
用を足した後は、まくり上げていた着物を下ろします。
しかしただ下しただけでは、帯などが乱れてしまっているので以下の点をチェックするといいでしょう。
- 襟元が左右対称になっているか、もたついていないか
- 帯が上に上がったままになっていないか
- 帯が前下がり・後ろ上がりになっているか
それぞれ詳しく見てみましょう。
着物をめくりあげたり腕を動かしたりすると、どうしても衿元はズレがちです。
帯が動かないように注意しながら、帯より下の部分から下前→上前の順番にそれぞれ体の斜め下・外側に向かって引っ張ってください。衿だけでなく、全体のもたつきが取れます。
男性の帯は腰骨の位置が正解です。裾をめくったときに上にズレてしまうことが多いため、しっかり直しましょう。両手の親指を帯の前側に上から挟み込み、グッと押し下げます。少しずつ外側に向けて指をずらして、全体を押し下げてください。
最後は、帯が前下がり・後ろ上がりになっていることを確認しましょう。
着物でも簡単にトイレができる!安心・便利なグッズ
慣れない着物でのトイレの時にも、安心できる便利なグッズがあります。簡単に手に入るものばかりなので、少しでも不安だったら必ず揃えて、トイレに持って行きましょう。
着物をはさむクリップ
帯に裾を入れ込んだ際に、バラけて落ちてこないようにクリップがあると便利です。
着付けクリップがなくても、強度の高めの洗濯ばさみで代用できます。特に、袴の場合は入れ込む枚数も多いため、手のひらサイズの布団ばさみがあると尚安心です。100円ショップで買い揃えることができるのも、嬉しいですね。
ローライズのショーツ
トイレで裾をまとめて持ちながら、下着を下げる際に、股上が深いショーツだと帯に抑え込まれて脱ぎにくくなってしまいます。
そんな時はローライズのショーツがあれば安心です。ユニクロでは390円で販売されています。安価で手に入るため着物用に持っておきましょう。
大きめのハンカチ
下向き姿勢の多いトイレで、メイクをしている女性は半衿や着物にファンデーションがつきがちです。半衿なら付け替えができますが、着物についてしまったら専門のクリーニングに出さないとなかなか落ちるものではありません。
対策のために、襟元にハンカチを挟みファンデーション移りを防止しましょう。Vの字にしっかり挟める大きめのものがおすすめ。せっかく着物なので、手ぬぐいでもいいですね。こちらも100円ショップで手に入ります。
着物のトイレに関するQ&A。こんなとき皆どうしてる?
ここで、今更聞けない着物のトイレにまつわる素朴な疑問を解決していきましょう。
Q.和式のトイレしかない時はどうする?
A.基本は様式と同じ。捲った裾を落とさないよう要注意
着物を着て出かけるようなイベント会場では、トイレが混み合っていることがよくありますね。運悪く和式しかない時も…。
万が一、和式のトイレに入っても、焦らず手順を追ってください。基本は洋式トイレと同じです。裾を落とさないように細心の注意を払いましょう。履物が汚れないようにガニ股で便器を跨ぐこともポイントです。
Q.生理の時はどうしてる?
A.基本的にはいつものと同じ。スパッツは深めのものだと脱ぎづらくなるため浅めのものを。
女性なら誰もが気になる生理問題。うっかりミスを防ぐため、こちらも焦らず集中しましょう。なぜなら、基本的にはいつもの行程と同じだからです。
もし、防寒のためにショーツの上からスパッツを履くとしたら、ショーツと同じく股上が深いものだと脱ぎづらくなってしまうので、浅めのものを選びましょう。
Q.ショールやコートはどうする?
A.上着は脱いでから。荷物をまとめるサブバックがあると汚さず安心。
トイレの前に上着は全て脱いでおきましょう。
羽織なら、トイレの壁フックにかければ問題ありませんが、大きなショールや重いコートはサブバッグに入れておくと、汚す心配もなく安心です。
袂に収まる折りたたみ式エコバッグでもいいですね。
まとめ
着物や浴衣、袴まで、男女ともにトイレの仕方は裾を1枚ずつめくっていくことがポイントです。とにかく、段階ごとに焦らず丁寧に。コツさえ掴んでしまえば、無事に用を足せます。
慣れてくると、着物でも洋服と同じくらいのスピードでサッと済ますことができます。心配な時は、あらかじめ自宅で練習してから外出すれば安心ですね。