「着物の正しいたたみかた」知っていますか?着物を正しくたたむ事で、余計なシワを防ぐことができ、アイロンなどの手間も省くことができます。
「シワがあるから」と乱暴にアイロンをかけてしまうと、着物地が傷んだり、風合いが変わってしまう事も…。
そこで、今回は、着物、襦袢、帯等の「正しいたたみ方」を詳しく紹介していきます。
着物の正しいたたみ方とは
着物には「正しいたたみ方」があります。正しくたたんで保管しておかないと、余計な折ジワが出来てしまい、着姿がだらしなく見えてしまいます。
「アイロンをかければ大丈夫」と思うかもしれません。
しかし「正絹」の着物は水や熱に弱く、着物地に直接霧吹きをかけたり、あて布をせずに高温のアイロンを直接当ててしまうと、生地が傷んでしまう原因になってしまう事もあります。
着物を手間なくキレイに着るためにも、アイロンによるトラブルを避けるためにも、着物は正しく、キレイにたたみましょう。
【基礎】着物のたたみ方の基本
それでは着物をたたむ際に、どのような事に気を付ければよいのでしょうか?基本的なポイントは以下の通り。
- 大きなたとう紙や布、もしくは綺麗な床の上でたたむ
- 広いスペースのある場所でたたむ
- 折り目や縫い目に沿ってたたむ
- しわを作らないようにたたむ
- 角と角を合わせるようにたたむ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
大きなたとう紙や布、もしくは綺麗な床の上でたたむ
大切な着物にシミや汚れ、ほこり等が付着しないためにも、着物をたたむスペースに汚れが無いか、十分に注意を払いましょう。
大きなたとう紙(着物を包む紙)や清潔な風呂敷、また着物を着る時に敷く「着物衣装敷(きものいしょうじき)」などの上でたたむと、シミや汚れを防ぐ事ができます。
たとう紙や布等が無く、どうしても床でたたまなければいけない場合は、着物を広げる前に必ず掃除機や雑巾などで、床をキレイにしてからたたみましょう。
たとう紙は300~1,000円程で、着物衣装敷は500~1,500円程で購入できます。
広いスペースのある場所でたたむ
着物をたたむには、十分なスペースも必要です。狭い場所では、シワなく上手に着物をたたむ事ができません。
たたみジワを防ぎ、着物をキレイに保管するためにも、広いスペースのある場所でたたみましょう。
折り目や縫い目に沿ってたたむ
着物をたたむ時には、折り目や縫い目に沿ってたたみます。
あらかじめ着物に付いている縫い目や、折り目を利用してたたむことで、他の部分に余計なシワができるのを防ぐ事ができ、着姿もスッキリと美しくなります。
しわを作らないようにたたむ
着物を正しくたたむのは「シワを作らない」ためです。前述しましたが、余計な折ジワは、着姿をだらしなく見せてしまうと共に、ついてしまったシワを取るためのメンテナンスにも時間がかかります。
せっかく正しくたたんでも、シワを付けてしまえば、元も子もありません。シワを作らないように手のひらで着物地を伸ばしながら、丁寧にたたみましょう。
角と角を合わせるようにたたむ
着物のたたみ方のポイントは「角と角を合わせるようにたたむ」事です。
元々着物は左右対称になっているので、衿先同士、裾の端同士などそれぞれのパーツの角と角を合わせて重ねていく事で上手にたたむことができます。
【解説】着物のたたみ方の種類と手順
ここからは、具体的に着物のたたみ方の種類や手順を紹介していきます。
本だたみ|男女共通着物の基本的なたたみ方
本だたみは、着物の基本的なたたみ方です。手順は以下の通りです。
- 1)着物を自分の前に置き、右に裾、左に衿がくるように広げる
- 2)衿の背中心がスナップで半分に折り返されている場合には外す
- 3)下前(自分の手前側の身頃)を脇線を基準に着物の中心に向かって折る
- 4)下前の衽(おくみ)を縫い目に沿って折り返す
- 5)上前(自分の奥側の身頃)の衿、衽、裾を下前の上に丁度重なるように置く
- 6)衿の背中側の部分は内側に折り返す。
- 7)上前の脇縫い線を左右の手でつまみ、下前の脇縫い線に重ねる
- 8)上の袖を一枚折り返す
- 9)裾から肩の方に向かって着物を半分にたたむ
たたんだ着物全体を持ち、ひっくり返して残っている方の袖をたたむ
一つ一つの動作の都度、中心から外側に向けて空気を抜くようにすると、シワなく畳む事ができます。
衿部分はきちんと角を出すように折る
「衿の背中心の部分は内側に折り返す」とサラッと説明しましたが、この部分はシワになりやすいので、注意が必要です。
衿の背中心をよく見ると、「谷折り」の様な折り目が付いていて、背中心から10cm程離れた所には、「山折り」の様な折り目が付いているのが分かります。
この「谷折り」の部分を内側に折り込み、「山折り」の部分同士を重ねると、自然にシワなく上手にたたむ事ができます。
この衿の背中心の部分は、着物の後ろ姿を決める大事な部分なので、シワの入らないように丁寧にたたみましょう。
振袖は袖が長いので、たとう紙の大きさに合わせて折り返す
振袖の場合には、袖が長いので、袖下の部分を少し折り返してたたむ必要があります。目安としては「たとう紙の大きさに合わせる」事です。
こうする事で、たとう紙にスッキリと納まります。
袖を途中で折り返す事で、折り目が付いてしまうのが気になる場合は棒状に丸めた厚紙や、真綿を棒状にしたものを当ててたたむと、折り目が付きにくくなるのでおすすめです。
コンパクトにしたいときは三つ折りに
着物をもう少しコンパクトにたたみたい場合は、着物を二つに折り上げる所を三つ折りにしましょう。
折り目の部分がシワになりやすいので丁寧に折り返すことを心がけてください。
袖だたみ|着物をひろげられない時の簡単なたたみ方
袖だたみは、着物を広げてたたむスペースが無い場合や、少し急いでいる場合などに着物を簡易的にたたむ方法です。
- 1)左右の脇線を持ち、背中心を中に折り込むような形でたたむ
- 2)両袖をそろえて、着物と重ねる
- 3)着物を裾側から肩線に向かって折り返す
- 4)もっとコンパクトにしたい場合は、さらに半分に折りたたむ
しかし、このたたみ方は正式なものではなく、あくまでも応急処置としての畳み方なので、タンスに収納する際には、しっかりと本畳みをしてしまいましょう。
夜着だたみ|装飾が多い着物を守るためのたたみ方
留袖、訪問着、振袖などの高価な着物の、紋や模様、箔や刺繍などを守るためのより丁寧なたたみ方です。
- 1)着物を自分の前に置き、右に裾、左に衿がくるように広げる
- 2)脇線を基準に、下前、上前の順番に折る
- 3)紋や前身頃の裾模様の部分に和紙を当てる
- 4)衿は内側に折りたたむ
- 5)右袖、左袖の順に身頃の上に重ねる
- 6)身頃を折りたたむ時に折ジワが付かないように和紙や真綿を棒状にしたものを置く
- 7)身頃を折りたたむ
- 8)後ろ身頃の裾模様の上にも和紙を置く
- 9)折山に棒状の和紙か真綿を置き、更に二つ折りにする
紋や箔の上に和紙を置く事で、他の部分との接触や擦れを避け保護します。また、折り目に棒状にした真綿や和紙を挟む事で、折り目を付けずに保管することができます。
【解説】帯や襦袢、腰紐のたたみ方と手順
それでは、長襦袢やコート、羽織や帯等はどの様にたためばよいのでしょうか?
長襦袢/コートのたたみ方
長襦袢や、雨コート(和装用の雨具)、道行(胸の部分が四角くカットされている羽織りもの)のたたみ方は、着物とは少し違います。
- 1)着物を自分の前に置き、右に裾、左に衿がくるように広げる
- 2)脇線を基準に、下前、上前の順番に折る
- 3)下前の脇縫線を身頃の中心に合わせて、袖と一緒に折りたたむ
- 4)袖を折り返す
- 5)上前も下前と同様に脇線が中心になるように折り、袖を折り返す
- 6)裾を持ち、身頃を半分に折り返す
長襦袢をたたむ時は、衿は内側に折り込まず、自然にたたみます。身頃をたたむ時も、その都度空気を抜き、シワを伸ばしながら丁寧に畳みましょう。
羽織のたたみ方
羽織のたたみ方は、本畳みと同じ要領でたたみます。
- 1)着物を自分の前に置き、右に裾、左に衿がくるように広げる
- 2)両脇は、まち幅(羽織の脇)の中心で折る
- 3)右側の衿付け線を基準に手前側に折り返す
- 4)左衿を右衿に重ねる(衿は内側に折り込む)
- 5)左側のまち幅の中心をつまみ、右側のまち幅の中心に重ねる
- 6)たとう紙の長さに合わせて裾を折り上げる
- 7)上の袖は身頃の上に、下の袖は身頃の下に折り込む
羽織の場合、脇には「まち」が付いています。羽織をたたむ時には、この「まち」の中心を折りましょう。
袋帯のたたみ方
袋帯のたたみ方にはいくつかありますが、一番多いのが「八つ折り」です。
しかしこの場合、お太鼓の部分に折り線が入ってしまうことがあるので、呉服店などでは、袋帯を半分に折った後、三つ折りにする方法をすすめています。
こうする事で、お太鼓の表面に折り目が付くのを防ぐ事ができます。
名古屋帯のたたみ方
名古屋帯は、胴に巻き付ける部分があらかじめ半分に縫い合わされている帯です。
全てが同じ幅の袋帯と比べて、たたみ方は少し複雑ですが、覚えてしまえば簡単です。
- 1)たれ(幅の広いお太鼓の部分)を左にして、胴回りの縫いどまりの位置で三角に折る
- 2)折り返した手(半分に縫い合わされた端の部分)を帯の端に沿わせて重ねていく
- 3)たれ先(たれの端の部分)の位置で、右側と同様三角に折り返す
- 4)帯の端に沿わせて反対側に重ねていく
- 5)残りの部分は右側の三角の手前で折り返す
- 6)右側の三角を内側に折り返す
- 7)半分に折りたたむ
帯で一番大切なのが、胴の中心に来る模様部分と、お太鼓の部分です。この部分に折ジワが出来てしまうと、シワを取るのに大変苦労するので、ここをポイントに丁寧にたたみましょう。
腰紐のたたみ方
腰紐を畳む時は、まず、シワを伸ばしながらキレイに半分にたたみ、紐の端の部分から五角形になるようにたたみましょう。
適当にクシュっと折りたたんで結んでしまうと、次に使う時に紐がシワシワになったり、ヨレてしまい、不便です。
きちんとたたんでおく事で、シワも伸び次に使う時にも快適に扱う事ができます。
まとめ
着物を正しく畳むのは、着姿をシワなくキレイに見せるためにとても大切な事です。
大切な着物を長くキレイに使うためにも、着る前のアイロンなどの事前準備の手間も省くためにも、正しい畳み方で、着物をもっと楽しみましょう。