着物の基礎知識

着物生地の素材の種類と特徴。見分け方や素材別の季節や使い分け、メリット・デメリットまとめ

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着物地素材 着物の基礎知識

着物の生地に使われる素材と聞いて、どのような素材が思い浮かびますか。

「正絹以外に何があるの?」「素材によって何が変わるの?」「使い分けがわからない…」

こんな疑問を持っている人もいるでしょう。誰に聞けばよいかもわかりませんし、今さら聞けないと思ってうやむやのままということもありますよね。

そこで今回は、素材ごとの特徴とメリット・デメリット、見分け方などをまとめました。

着物生地の素材は大きく分けて5種類

半襟

着物の生地に使われる素材は、絹、綿、麻、毛、化繊の大きく分けて5種類あり、素材ごとに特徴があり、適した季節や着用シーンが異なります。

暑い季節は涼しい素材を、雨の日には水に強い素材を、といったように着物は素材の特徴を最大限活かして着用されてきました。

素材について理解を深めることは、着物を快適に着こなす上で必要なことです。

それではさっそく、それぞれの素材について特徴を見ていきましょう。

絹織物、正絹の着物とは

綸子絹(綸子)

塩瀬羽二重絹(塩瀬羽二重)

正絹といえば高級品というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

正絹の着物は古くから親しまれ、今でも根強い人気を誇っています。絹織物、正絹という素材について、詳しく見ていきましょう。

絹織物、正絹の特徴・着るシーン

絹織物とは絹で織られた織物の総称で、そのうち「正絹」には絹100%で作られた生地という意味があります。

正絹の着物といえば、なめらかな肌触りと美しい光沢が独特の風合いを感じさせますよね。

その高級感のある特徴から、振袖や留袖、訪問着などフォーマルな着物はほとんど正絹の着物です。

絹織物を作るのに必要なのは蚕。

蚕が吐き出した細い糸を、繭から丁寧に取り出して作られた糸を生糸といい、その生糸100%で織られた生地が正絹というわけですね。

正絹を作るには蚕を育てることから始めなければなりません。手間と時間がかかることからも、高級品である理由がわかります。

現在では、海外からした輸入生糸や織物が増え、純国産の絹はたいへん希少となってしまいました。

日本では京都の西陣織、群馬の桐生織が古くから有名で、今でも高い人気を誇り伝統産業をけん引しています。

絹織物、正絹の着物のメリットとデメリット

絹のメリット

  • 吸湿性と通気性が良い
  • 肌によくなじみ着心地が良い
  • 静電気が起こりにくい
  • 染まりやすく発色が良い
  • 紫外線を吸収してくれる
  • 虫が付きにくい

絹のデメリット

  • 日光や時間の経過によって変色しやすい
  • 濡れると縮むため自宅での洗濯が難しい
  • 摩擦に弱く毛羽立ちが起こる
  • 手入れが大変

絹織物のメリットは、吸湿性と通気性が優れていること。

この性質から、冬はあたたかく夏はすずしい着心地です。季節に寄りそう絹が古くから愛用されてきたのにも納得がいきますね。特に正絹の着物は、素材の質が格別です。

また絹は人肌と同じタンパク質で構成されています。化学繊維とは異なり、肌が弱い人でも着られるのが嬉しいですね。

やわらかな風合いは肌によくなじむので、着付けがしやすく着崩れもしにくいといったメリットもあり、安心して着られるでしょう。

一方、絹織物のデメリットは手入れが難しいということ。

絹は繊細な素材なので、洗濯には十分注意が必要です。特に正絹の場合は自宅では洗わず、呉服屋さんか悉皆屋さんで丸洗いをお願いしましょう。どうしても自宅で洗う場合はぬるま湯で手洗いするのが一般的です。

自宅での保管の際には、湿気に弱いという性質から、着用後に丸一日以上陰干しすることや良く晴れた日にタンスにしまうなど細やかな気配りが必要になります。

綿織物、木綿の着物とは

丹波もめん
木綿(丹波もめん)

木綿唐桟木綿(唐桟)

木綿は、洋服にも使われており、私たちにとって身近な素材ですね。

着物の場合は、どのような特徴やメリット・デメリットがあるのでしょうか。

綿織物、木綿の特徴・着るシーン

綿織物とは木綿で織られた織物の総称で、木綿とはワタという植物から取れる繊維のことです。英語ではコットンと呼ばれています。

木綿の着物は普段着として一番親しまれてきたと言っても過言ではないでしょう。

木綿の繊維は太く丈夫なので、料理や洗濯などで生地に負担がかかる日常生活でも重宝されてきました。

単衣に仕立てるのが一般的で、真冬以外のシーズンで着ることができます。通気性が良く、汗をよく吸うことから、夏の浴衣としても定番の素材ですね。

産地別では、伊勢木綿が有名です。三重県津市で織られている伊勢木綿はやわらかい肌触りでシワになりにくい特徴があります。色柄が豊富でファッションとしても十分楽しめます。

綿織物、木綿の着物のメリットとデメリット

木綿のメリット

  • 生地かしっかりしていて丈夫
  • 汚れが目立ちにくく、お手入れが簡単
  • 水分をよく吸収する

木綿のデメリット

  • しわになりやすい
  • 濡れると縮む
  • フォーマルな場では着られない

メリットは、お手入れが簡単で経済的ということ。

木綿の着物は自宅で洗濯ができ、汚れがついた場合も手もみ洗いができます。正絹ほど頻繁に呉服屋さんに出す必要がなく、購入時も安価なものも多くあるので、お財布にもやさしいですね。

デメリットは、カジュアルシーンのみの着物であること。

木綿の格は高くないのでフォーマルシーンには着用できません。お出かけに着ていく場合は、その場の雰囲気を考慮する必要があるでしょう。

麻の着物とは

麻越後上布麻(越後上布)

麻能登上布麻(能登上布)

暑くなると、麻のワンピースやワイシャツなどをよく見かけます。

着物にも麻が使われることをご存じでしょうか?夏と相性抜群の麻の着物について、くわしく解説します。

麻の特徴・着るシーン

着物に使われる麻は、主に苧麻という植物からとれる繊維のことを指します。

麻は夏着物の素材として大活躍。通気性が高く風通しがいいこと、生地に張りがあり肌に張りつかないことから、とても涼しく着ることができるのです。

さらに着物としては珍しく水に強いという特徴も。湿気や雨の多い日本の気候にぴったりですね。

麻の生地はちょっとざらっとした肌触り。

つややかでなめらかな生地の方が格が高いとされている着物の中では、格は高くありません。フォーマルでは着用できず、あくまで普段着として使われています。

麻の中でも、細い麻糸で作られた生地は「上布」と呼ばれ、伝統的技法による高級品です。沖縄県宮古島の宮古上布は有名で、布をたたく砧打ちの工程が多いので光沢がみられます。

麻の着物のメリットとデメリット

麻のメリット

  • 通気性が良い
  • 吸汗性が良く涼やか
  • 自宅での洗濯が可能

麻のデメリット

  • しわになりやすい
  • 色落ちしやすい
  • フォーマルな場では着られない

メリットは、お手入れが簡単なことです。

自宅で洗濯できるので、よく汗をかく夏の着物としてはありがたいですね。速乾性もあり、すぐに乾きます。

ただし、麻は縮んでしまう可能性があるので、脱水は短めにしてください。仕立てる際は、3-4mm大きめに仕立てた方が良いでしょう。

デメリットは、シワがつきやすいことです。

特に膝裏にはシワがつきやすく、座ったり立ったりを繰り返しているうちについてしまいます。長時間座っているようなシーンでは麻の着物は避けた方がいいでしょう。

シワは霧吹きで湿らせてあげると、取れることが多いです。着用後は必ずと言っていいほどシワがついているので、このお手入れをしてくださいね。

ウールの着物とは

半襟ウール(メリンス)

冬の衣類に良く使われるウール。洋服だけでなく着物としても、私たちを暖めてくれます。

ウールの着物とはどのようなものなのでしょうか。

ウールの着物の特徴・着るシーン

ウールとは、ご存じの通り、羊の毛から作られる繊維です。

刈り取った羊の毛のうち、長い繊維のものを引き伸ばしながら、撚りをかけて細い糸を作り、生地へと織っていきます。

ウールの最大の特徴といえば、保温性にとても優れているという点ですね。

これは、ウール繊維の構造上、生地にたくさんの空気を含むことができ、暖かい空気を逃がさないという性質が理由です。

ウールの着物は普段着として用いられ、夏以外の3シーズンで着用できます。単衣仕立てなので軽量で動きやすく、シワにもなりにくいので、忙しい日常生活にもぴったり。

また、ウールと絹を混ぜて織られたものをシルクウールと呼びます

絹のような光沢を持つことから、普段着だけでなくちょっとした外出着にも着用できます。もちろん、ウールとしての暖かさもあり、絹とウール両方のメリットを持ち合わせている優れものです。

ウールの着物のメリットとデメリット

ウールのメリット

  • 保温性に優れている
  • 汚れにくい
  • シワになりにくい
  • 比較的安価に手に入る

ウールのデメリット

  • 虫に食われやすい
  • お湯で濡れると縮む
  • フォーマルな場では着られない

ウールの着物のメリットは、お財布にやさしいこと。

仕立てる場合、単衣仕立てなので裏地がいらない分、比較的安価でできます。

シーズンごとの洗濯も汚れたときの洗濯も自宅でできるので、これも経済的ですね。また、3シーズン着れることからもコストパフォーマンスは抜群でしょう。

デメリットは、虫に食われやすいこと。

羊毛セーターと同じで、ウールの着物は虫の大好物です。そのため、保管の際には防虫剤は必須。

さらに、虫食いを拡げないために、正絹など他の素材の着物とは分けて保管しましょう。できれば長くしまいこむのではなく、頻繁に着てあげることが最善の虫食い対策です。

化繊(ポリエステル)とは

襟合わせ

今では見かけることが多くなったポリエステルの着物。観光地の着物レンタルはほとんどがポリエステル製です。

なぜこんなにも普及したのでしょうか。その特徴について詳しく解説します。

化繊(ポリエステル)の着物の特徴・着るシーン

化繊とは化学繊維の略で、人工的に作られた繊維のことです。化繊の中でもポリエステルという繊維が、着物によく使われています。

ポリエステルの着物は、しわになりにくいのでお手入れが楽、水に強いので雨の日も安心、摩擦にも強いので頻繁に着ても傷みにくいといった嬉しい特徴がたくさん

色柄のバリエーションも豊富で鮮やかな色のものも多く、中にはキャラクター柄まであります。ファッションとして幅広く楽しめますね。

昔は絹と比べて質感が劣るなどポリエステルの着物に対して否定的な意見が多かったのですが、現在は技術が進み絹と見間違うような質感の高級ポリエステルも生まれました。

東レのシルックは、絹のような風合いが特に美しい高級ポリエステルとして有名です。

普段着はもちろん、高級ポリエステルならば訪問着や色無地にも使われています。ただし、着物に詳しい人の集まりでは避けた方がいいかもしれません。

化繊(ポリエステル)の着物のメリットとデメリット

化繊のメリット

  • 洗うことができ手入れが楽
  • 安価に手に入る
  • 色落ちや日焼けしにくい
  • 水分を吸収しないので汚れにくい

化繊のデメリット

  • 通気性が悪い
  • 着付けが難しく、着崩れしやすい
  • 吸水性が悪いので蒸れやすい
  • 着心地の悪いものもある
  • 静電気が起きやすい

メリットは、お手入れがとっても簡単ということ。

前述した特徴の他に、カビがつきにくいことや型崩れしにくいこと、自宅で洗濯できることという特徴も備えています。

価格もお手頃なものからあるので、「着物は高いし、お手入れも大変」と思い、着物に踏み出せなかった人にもおすすめです。

デメリットは、静電気が起きやすいことと通気性が良くないこと。

やはり化学繊維なので静電気は起きやすいです。着物は巻きスカートのように布が重なっているため、歩くだけで布同士がこすれ静電気が起こってしまいます。静電気除去スプレーなど使うと良いでしょう。

また、通気性が良くないので、夏は熱がこもりやすく着心地が良くないことがあります。暑さ対策をして熱中症にならないようにしましょう。

着物地の素材の見分け方

振袖04

それぞれの素材の特徴がわかったところで、見分け方はどうすればいいのでしょうか?

リサイクル着物や受け継がれた着物など、できれば自分で素材を見分けたいという場面もあると思います。

ここでは、素材の見分け方について説明します。

証紙を見る

証紙とは、着物の価値と品質を示す証明書です。

証紙には、産地・生地の素材・製造者(織り元)の名前・染色方法・織り方など、着物の詳しい内容が記載されています。

証紙があれば、素材は確実に判別できますね。

ちなみに、証紙とは紙ではなく、その着物の端切れに添付されているものなので、見落として捨てたり失くしたりしないように注意しましょう。

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手触りで確かめる

証紙など手がかりになるものがない場合は、手で触って確かめるしかありません。それぞれの手触りについて知り、見分けるための目安にしてください。

正絹は、絹ならではのなめらかさがあり、肌に吸いつくような手触りです。手にとってもわかりにくい場合は、袖を通してみると良いでしょう。意外な重みとしっとりとした着心地を感じられます。

綿は、洋服やハンカチなど身の回りのものに多く使われている身近な素材なので、何となくわかるという方もいるでしょう。木綿は、繊維が詰まったような生地で少しごわごわしているのが特徴です。

麻は、木綿と見分けがつきにくいことがあります。麻は木綿よりも、少し硬くパリッとした見た目と手触りです。

ウールは、表面が毛羽立っていてざらっとした手触りで、見分けやすい素材です。また、肌にチクチクとした感じがあればウールである可能性が高いでしょう。

ポリエステルは、絹に似たなめらかな手触りですが、絹よりも少し固く乾いた感じがあります。また絹のような重厚感はなく、軽い素材です。

まとめ:季節やシーンに合った着物地を選んでオシャレを楽しみましょう

着物地には大きく分けて絹、綿、麻、毛、化繊の五つの素材があります。

フォーマルな着物の多くは絹を使用していますが、普段着であれば暑い日用や寒い日用、動きやすいものから、お手入れのしやすいものまで素材によって種類はさまざまです。

素材の特徴をよく理解して、その場に合った着物を選んでこそ真のおしゃれ。

いろんな着物を楽しんでくださいね。

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