「もし着物でお出かけする日に雨が降ったら…」そう考えただけで、「汚れたらどうしよう」「その後のケアが面倒」などと一気にテンションが下がってしまいます。
しかし、事前の雨対策や、着物が濡れた時の適切な対処法などを知っておけば、雨の日でも安心です。
そこで、今回の記事では「雨の日の着物」の事について、事前に準備しておく事や注意点、また、万が一雨に濡れてしまった時の正しい対処法、また、雨の日ならではのコーデなどを詳しく解説していきます。
雨は着物の大敵! 適切な備えをしましょう
着物は濡れると洋服より重くなる上、手入れの方法が適切でない場合には、縮んでしまったり、シミになってしまったりと、大切な着物が傷んでしまう可能性もあります。
着物でのお出かけの際に、少しでも「雨が降りそうかな?」と感じた時には、十分に「雨の備え」をして、お出かけしましょう。
雨の日でも快適! 着物の雨天時の対策
雨の日のお出かけでも安心な、着物の備えを見ていきましょう。
足元・履物の対策
まずは、雨の日に一番汚れやすい足元の対策法です。
- ウレタン草履や雨草履で雨の日でも歩きやすく!
- 足元が悪いときは草履カバーを持っていくのがおすすめ
- 足袋や足袋カバーも撥水できるものがあると汚れにくく安心
ウレタン草履や雨草履で雨の日でも歩きやすく!
雨の日の足元には「ウレタン草履」や、雨専用の「雨草履」がおすすめです。
ウレタン草履は、底の部分が水に強いウレタン製になっていて、裏面には滑り止めが付いています。
また、「雨草履」は雨天専用の草履で、つま先の部分に付いている透明のカバーが足元の汚れを防いでくれます。
どちらも、3,000~5,000円の範囲で購入することができるので、雨の日用として1足は揃えておきましょう。
フォーマルな着物に合わせる高級な「革草履」は、底の部分が水に弱い皮製で出来ているものが多く、雨天時に履くとどうしても傷みやすくなってしまいます。また、滑り止めなども付いていないため、滑りやすく転倒も心配です。
雨が降る事が事前に分かっている場合は、大切な草履と自分の身を守るためにもぜひ、ウレタン草履や雨草履を利用しましょう。
フォーマルシーンの場合は、室内に入ってから本来のものに履き替えれば、草履も傷めず、水に濡れる心配もありません。
足元が悪いときは草履カバーを持っていくのがおすすめ
足元が悪い場合などには、「草履カバー」があると便利です。「草履カバー」は、草履のつま先と底の部分をすっぽり覆う事のできる、ビニール製のカバーです。
雨の降っている屋外ではカバーを使い、室内に入ったらサッと取り外す事ができます。カバーは折りたためば小さくなり、カバンにもコンパクトに納めることが可能です。
草履カバーは700~3,000円ほどで購入する事が出来ます。
外出先で雨が心配なときには、いざという時のために、この「草履カバー」を持って行くと安心です。
足袋もしくは足袋カバーも撥水できるものがあると汚れにくく安心
雨天時は、撥水効果のある足袋や足袋カバーが大活躍してくれます。多少の雨や地面からの跳ね返しなら、水を弾いてくれるので、よほどの事が無い限りは生地に染み込んだり、濡れてしまう事はありません。
撥水足袋、足袋カバーは、500~1,500円程で購入することができます。
念のため室内に入ってから履き替える足袋も、準備して出かけると更に安心です。
上着・傘の対策
大切な着物を雨から守るためには、羽織りものや傘も大切です。
- 雨コートは裾まで着物を守れる強い味方
- 大きめの傘だと袖を濡らさず安心
- 襟元は大きめのスカーフなどで守るとなおよし
雨コートは裾まで着物を守れる強い味方
雨が降っている日には「雨コート」と呼ばれる、和服用のレインコートが便利です。着物全体を裾まで覆ってくれ、泥はねなどから着物を保護してくれます。
雨コートには、オールインワンタイプのものと、二部式のタイプがあり、価格はどちらも3,000~30,000円程と品質により幅があります。
更に着物への泥はねを防ぐためにも、雨コートの下の着物はまくり上げて、腰のあたりでクリップ止めしておくと更に安心です。
また、もし雨コートを持ち歩いていない状態での突然雨に降られた場合は、応急処置として近くのコンビにで1,000円程で売っているビニール製のレインコートを着用しましょう。
雨コートの種類や着方について詳しくはこちらの記事でも紹介しています。
大きめの傘だと袖を濡らさず安心
着物を着ている場合には、大きめの傘を使いましょう。傘が大きければ袖を濡らす事なく、大切な着物を雨から守る事ができます。
傘の骨部分が65~70cmくらいあることを目安に選ぶのがおすすめ。
また、通常の傘は骨が8本ですが16本のものなど、骨の多い物を選ぶと傘の面積が広いため安心です。
また、着物に良く合う「和傘」を合わせれば雰囲気を統一する事ができます。価格帯は、1,500~20,000円と様々です。
ただ、大きい傘はそれだけ重くなりがちです。重い傘は手が疲れてしまう事も考えられるので、長時間で歩くときなどは、なるべく軽い物を選ぶようにしましょう。
襟元は大きめのスカーフなどで守るとなおよし
雨コートや傘に加えて、首元にスカーフやハンカチ、風呂敷などを巻き付けると、更に着物を雨から守る事ができます。
着物全体を覆ってくれる雨コートも、衿元だけはどうしても着物が露出してしまいます。水に弱い着物を最大限に守るためにも、スカーフを巻いて着物全体の雨対策をしっかり行いましょう。
スカーフは、わざわざ購入しなくても洋服用のもので十分代用できます。
衿元全体をスカーフでカバーし、余分な部分は雨コートの中に入れ込んでしまえば、首元もスッキリし、スカーフも動く心配が無いので、雨の侵入をしっかり防ぐことができます。
着物の対策
着物に対しての雨対策はどのような事に注意すればよいのでしょうか?
- 普段着なら洗えるポリエステルの着物を選ぼう
- 防水スプレーで簡単に雨対策が可能。素材に合ったスプレーを
- ガード加工も有効。ただしその後の使い方には注意
普段着なら洗えるポリエステルの着物を選ぼう
雨が降っている時のちょっとしたお出かけには、ポリエステルの着物がおすすめです。ポリエステルの着物は、安価なので雨に濡れても比較的安心で、自宅で洗濯もできるので、雨の日には重宝します。
正絹の小紋や、高級品の紬などはお天気の日に、雨の日には手入れのラクなポリエステルと使い分ける事で、天候を気にせず外出を楽しむ事ができます。
防水スプレーで簡単に雨対策が可能。素材に合ったスプレーを
防水スプレーを使うと簡単に雨対策をする事ができます。ただしその際には、着物の素材に十分に注意しましょう。
正絹の着物の場合は、一般的な衣類用や皮用の防水スプレーを使用すると、吹きかけた部分が変色してしまう事があるからです。
防水スプレーを使う場合は、必ず「着物用の防水スプレー」を使い、更に注意事項をチェックして、着物の素材に合ったものかどうかを確かめてから使う事をおすすめします。
着物用の防水スプレーは、1,500円~3,000円弱で購入する事ができます。
ガード加工も有効。ただしその後の使い方には注意
着物を雨や汚れから守るためには、着物を「ガード加工」する事も有効です。ガード加工とは、着物全体に撥水加工を施す事によって、汚れを付きにくく、落としやすくするものです。
有名なものには、株式会社パールトーンが行う「パールトーン加工」があります。
ただし、ガード加工をした着物は、洗い張り、染め直しがしにくくなることがあるので注意しましょう。
また、ガード加工をした着物をドライクリーニングに出してしまうと、効力が弱くなってしまうので、加工後のクリーニングは、ガード加工対応のクリーニング店を選ぶ事をおすすめします。
ガード加工には、6,000~7,000円程の費用がかかります。
雨濡れた場合はどうする?雨の日の着物のお手入れ
ここからは、十分な雨対策を行っても、それでも着物が濡れてしまった場合の対処法を紹介します。
外出先での応急処置
雨に濡れてしまった時は、その場の対処も大事です。
帰ってからでいいやと思わず、その場での応急処置もきちんと行いましょう。
着物をレンタルしたという人も、間違った対処をしてしまったり、濡れた着物をほったらかしにしていると、返却する時に問題となる可能性があるので頭に入れておくといいでしょう。
なるべく早く乾いたタオルで水気をふき取る
外出先で着物が濡れてしまったことに気付いたら、なるべく早く乾いたタオルで水分を取り除きましょう。
この時、着物を強く叩いたりすると、着物地を傷めるばかりか、かえって着物に水分を染み込ませてしまう場合もあるので、「そっと水分を吸い取る」イメージで行う事がポイントです。
泥はねは押し付けず、水気のみをふき取っておく
泥はねが出来てしまった場合、こすったり、叩いたりするのはNGです。濡れている砂は、取り除きにくく、無理にこすったりすると、かえって泥汚れが広範囲になってしまう場合があるからです。
泥はねの部分が濡れている間は、水分のみを優しくふき取る程度に留めておき、十分に乾いてからブラシなどで優しく汚れを落とします。
帰宅後のお手入れ方法
雨の日には帰宅後のチェックとお手入れが必須。
着物を着た日には毎回手入れをしているという人も、雨の日にはいつもよりことさら丁寧にメンテナンスを行いましょう。
汚れや濡れをチェック。濡れた場所はタオルなどで水気を取る
外出先から帰ったら、まずは着物をハンガーに掛けて汚れが無いかどうか全体をチェックしましょう。自覚が無くても雨に濡れたり、汚れが付いてしまっている所があるかもしれません。
濡れている場所を見付けた場合は、乾いた手ぬぐいを使って優しく水分を吸収します。
この時点で泥汚れが付いてしまっている場合でも、慌ててこすったりせず、乾くまでしばらく放置しましょう。
陰干しはいつもよりもしっかりと
着物が雨で濡れてしまった場合には、湿気を取り除くために、直鎖日光を避けた風通しの良い屋外で短くても半日以上は陰干ししましょう。
雨が降っていて屋外に干す事が難しい場合は、家の中の湿気の少ない場所で干し、着物の水分を取り除きます。
泥汚れは乾いた後にブラシで優しく払う
泥汚れを落とすタイミングは、必ず「泥が乾いてから」です。泥が水分を含んだ状態では落ちにくかった泥汚れも、乾燥すれば幾分取りやすくなります。
着物がしっかりと乾燥した事を確認してから、ブラシなどを使って優しく、少しずつ落としましょう。
こんなときはすぐにクリーニング店で相談を
以下のような場合には、一刻も早くクリーニング店に持ち込みましょう。
広範囲に濡れてしまった、着物の地色が変わるほどびしょびしょになった
着物全体が重くなるほど雨に濡れてしまっていたら、なるべく早くクリーニングに出しましょう。
特に、正絹の着物は水に弱く、大量の水分を含んだまま放置しておくと生地が縮んでしまう可能性があります。
そうなると、通常のクリーニングでは元に戻す事が難しくなり、洗い張り(着物のパーツを全て分解して、1反の反物の状態に戻してから洗う作業)と、仕立て直し(新たに着物の状態に仕立て直す)を行わなければならなくなり、数万円の費用がかかってしまいます。
手入れをしたが輪ジミや色のにじみ、生地がよれたり伸びてしまった
自分で水分をふき取ったり、汚れを取り除いたりとケアをしても、以下のトラブルが解消しない場合場合は、早めにクリーニングを行いましょう。
- 着物に輪ジミができてしまっている
- 模様の染料がにじんでしまった
- 生地がよれたり伸びたりしている
ホームケアでは限界はあっても、着物のクリーニング専門店に相談すればキレイになる場合もあるので、汚れの専門家に相談する事をおすすめします。
雨の日の着物に関するQ&A
以下、雨の日の着物に関する疑問をQ&A方式でまとめてみます。
Q.着物をレンタルしたいけど雨の日はやめておくべき?
A.羽織や傘もレンタル可能。雨の日の汚れOKのショップを選んだり、セットの草履ではなくブーツを合わせるなど工夫をするのもおすすめ
もちろん雨の日でも着物のレンタルは可能です。もしレンタル当日に雨が降っていたとしても、羽織や傘などを追加で借りる事も出来ます。
また、雨の日に着物を借りる場合には、以下の点をレンタルショップに確認しておくと安心です。
- 着物が雨に濡れた場合は、クリーニング代が別途発生するのか
- 汚れても安心な補償などのオプションはあるか
ほとんどのレンタル店では、レンタル料にクリーニング代が最初から入っていたり、万が一汚れてしまった場合の着物保険(500円程度)などが用意されている事が多いので、借りる際に確認しておくと安心です。
レンタル品だからと、着物から汚れを守るために「防水スプレー」などをかけてしまうのはやめましょう。素材に合った適切な防水スプレーを使わない事が、シミの原因にになってしまう場合があり、直す事が難しい場合は、お金を請求されてしまう場合もあるからです。
雨の日の場合は、事前に注意点を確認し、汚れてしまった場合には今後のトラブルを避けるためにも、しっかりと申し出る事が大切です。
また、どうしても足元が濡れるのが嫌だと思う場合には、丈の短めな着物を選び、おしゃれな編み上げブーツをコーデに取り入れるなどしてもとってもおしゃれです。
Q.コートを持っていないけど買うべき?
A.レインコートでも代用可能。ただ、コートがあるとさらにコーディネートが楽しくなるので余裕があれば一枚あると便利
和服用の雨コートを持っていなくても、目的は「着物を雨から守る」事にあるので、サイズさえ合えばレインコートで十分代用可能です。
ただ、着物を頻繁に着る場合などは、雨コートを持っている事で全体のトータルコーディネートができ、見た目も美しくキマるので一枚あると重宝します。
Q.雨の日におすすめの柄やコーデは?
A.傘や紫陽花、カエルなど雨の日らしいモチーフを入れるのもあり。傘と合わせたコーデも雨の日ならではの楽しみ方も
雨を「デメリットとして」考えず、逆に雨の日だからこそ楽しめるコーディネートで、雨自体を楽しんでしまうのも一つの方法です。
例えば、帯留めなどに紫陽花やカエルなどのモチーフを取り入れたり、傘と和服の色を合わせたり、あえて反対色の傘を持ってきたりと、傘もコーデアイテムの一つと考えれば、コーデの幅が広がり、雨の日の着物を更に楽しむ事ができます。
まとめ
「雨の日のお出かけは、着物が汚れてしまうリスクもあり心配…」そんな悩みも、事前の準備、また応急処置やその後のメンテナンス方法を知っていれば安心です。
雨の日対策をしっかり行って、雨の日の着物もどんどん楽しみましょう。