大島紬や西陣織、宮古上布や京友禅など、着物には様々な種類の染物や織物が使われています。
その中でも国や都道府県が伝統ある技術、作品であると指定し、保護している品目を「伝統工芸品」と呼びます。
着物を取り扱う場合、個々の技術やデザインはもちろんのこと、伝統工芸品かそうでないものかによっても価値は大きく違ってきます。
今回は「そもそも伝統工芸品って何?」という所から、代表的な染め、織りの伝統工芸品の産地や特徴、またその買取価格などを詳しく紹介していきます。
伝統工芸品とは
そもそも伝統工芸品とはどういったもののことをいうのでしょうか?
伝統工芸品の条件
(画像引用:経済産業省ホームページ)
伝統工芸品とはその名の通り、「伝統」のある「工芸品」のこと。そもそもは手工業によって製造された日常生活において使用されるものでしたが、現在はすでに使われなくなってしまったものも多く、定義としては少し曖昧になっています。
伝統工芸品は各都道府県や経済産業省によって指定されます。
たとえば「伝統工芸品産業の振興に関する法律」に基づき、経産省の伝統工芸品として指定されるためには以下の5つの条件を満たさなくてはなりません(参考:伝産法について)。
- 主として日常生活に使われるもの
- 製造過程の主要部分が手作業で行われるもの
- 伝統的な技術により製造されるもの
- 伝統的に使用されてきた原材料を使い製造されているもの
- 一定の地域が産地となり主にそこで製造されているもの
上の5つの条件を満たし、経済産業大臣の指定を受けた工芸品が「経済産業大臣指定伝統工芸品」に認定され、伝統マークのデザインを使った「伝統証紙」が貼られます。
現在、日本国内の伝統工芸品は218品目で、その中で友禅染めや紬など着物の多くも伝統工芸品として指定されています。
国の重要無形文化財とは何が違う?
伝統ある着物について調べていると、伝統工芸品と同じく「重要無形文化財」という言葉も目にします。
伝統工芸品と国の重要無形文化財との違いは、価値があるとされる対象が「品物に対して」なのか「技術に対して」なのかの違いです。
伝統工芸品が「品物」に対して指定されるのに対し、重要無形文化財は、伝統工芸品を製造する際の「技術」に対して指定されます。
人間の技は無形で、形には表せません。その技術の中で、国が「日本の伝統文化を継承するために必要」と判断したものを国の重要無形文化財に指定します。更に重要無形文化財の技を持っている個人や団体が「技術」の保持者として人間国宝に認定されます。
ちなみにこちらは経産省ではなく文部科学省の管轄です。
伝統工芸品の着物(染物・織物)一覧
伝統工芸品として認定されている染物や織物は以下の通り。
着物としてよく目にするのは染物では、友禅染め、小紋、絞り染め、織物であれば紬や上布、絣、縮などでしょう。他にも帯として使われることの多い西陣織や博多織も伝統工芸品として指定されています。
(それぞれの品目を選択すると、そのページへとびます)
染物 13品目 |
京友禅 | 東京手描友禅 | 加賀友禅 |
名古屋友禅 | 東京染小紋 | 京小紋 | |
東京無地染 | 名古屋 黒紋付染 |
京黒紋付染 | |
有松・鳴海絞 | 京鹿の子絞 | 琉球びんがた | |
浪華本染め | |||
織物 38品目 |
本場大島紬 | 村山大島紬 | 結城紬 |
塩沢紬 | 信州紬 | 牛首紬 | |
置賜紬 | 久米島紬 | 小千谷紬 | |
近江上布 | 宮古上布 | 八重山上布 | |
本塩沢 | 秩父銘仙 | 本場黄八丈 | |
喜如嘉の 芭蕉布 |
久留米絣 | 伊勢崎絣 | |
十日町絣 | 弓浜絣 | 琉球絣 | |
十日町 明石ちぢみ |
小千谷縮 | 阿波正藍 しじら織 |
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西陣織 | 博多織 | 多摩織 | |
桐生織 | 読谷山花織 | 読谷山 ミンサー |
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八重山 ミンサー |
首里織 | 与那国織 | |
知花花織 | 南風原花織 | 二風谷 アットゥㇱ |
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羽越しな布 | 奥会津昭和 からむし織 |
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刺繍 | 加賀繍 | 京繍 | |
組紐 | 伊賀くみひも | 京くみひも | |
足袋 | 行田足袋 |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
染織品
京友禅
京友禅は京都府一帯で作られている染物です。
京友禅の魅力は、何といってもその絢爛豪華さにあり「みやび」という言葉がピッタリ当てはまります。色とりどりの色彩で染色された模様に、絞りや金彩、刺繍をほどこすことにより、明るく華やかな印象です。
手描き友禅の場合、20種類以上ある工程をそれぞれ専門の職人が担当し分業して仕上げます。絢爛な装飾が多いほど時間がかかり、一つの着物に一年がかかることもあるほど。その膨大な手間がから、最近では型染めや捺染を用いることが主流となっていて、大型プリンタを使ったデジタル染めも行われています。
ちなみに模様の「ぼかし」は中心が濃く、外側が薄くなっているのが京友禅の特徴です。
東京手描友禅
東京の新宿区、練馬区、中野区などで作られている染物です。反物作りの全行程を一人の作家が行います。
藍色、茶色などの渋い色を使いながら、白地も模様の一つに取り入れ、粋に仕上げるのが特徴です。図案には、昔の東京湾(江戸湾)の風景が多く描かれています。
加賀友禅
加賀友禅は、石川県の金沢で作られる染物です。京友禅を考案した宮崎友禅斎が、晩年京都から加賀へ移り住み、染色技術を指導した事から発展し、現在の加賀友禅の形になりました。
「加賀五彩(かがごさい)」と呼ばれるえんじや古代紫などの5つの色で模様を描き、金彩や刺繍などはほどこされません。「ぼかし」の技法は京友禅とは反対に、中心が薄く、輪郭部分が濃くなっています。
名古屋友禅
愛知県の名古屋市、春日井市、西尾市、北名古屋市で主に生産される友禅染です。
落ち着いた色を使い、色数が少なく色の濃淡で絵柄を表現します。京友禅のような華やかさはありませんが、落ち着いた雰囲気が特徴的です。
東京染小紋(江戸小紋/東京おしゃれ小紋)
東京染小紋は東京で作られている型染の着物です。
伝統ある柄と染料で絹地を染めたものを江戸小紋、またその染色技法を用い、より自由なデザインや染料で作られたものを東京おしゃれ小紋と分類し、この二つを合わせ東京染小紋と呼んでいます。
小紋はもともと小さな柄が着物地全体に施されたものを指しますが、江戸小紋では、遠目からは無地にも見えるほどの極小の柄を一色のみで染め上げるのが特徴。
江戸時代、豪華な柄物の着物が禁止されたことから、このような小さな柄を染める技法が発展したと言われています。
模様の種類にも格があり、定め小紋と呼ばれるもののうち、江戸小紋三役や江戸小紋五役などは特に格の高い柄として、人気が高いです。
京小紋
京小紋は京都で作られる型染で、起源は1,200年前ほど前とも言われています。
同じ産地である京友禅と互いに影響しあっていたため、江戸小紋と比べると多色で色鮮やかながらも、はんなりとした独自の魅力が特徴的。
モチーフは江戸小紋のような幾何学的なもの以外に具象化されたものも多くあり、最近ではよりモダンなデザインも増えています。
東京無地染
東京無地染はその名の通り、東京都で作られる無地染です。
平安時代に仏教の伝来と共に、藍と紅花が伝来し、江戸時代にそれらを使った「江戸紫」で反物を染めたのが始まりと言われています。
色無地は、格のあるパーティーから普段着としてTPOに合わせて様々な場面で使うことができ、特に東京無地染めは落ち着いた気品のある印象があるため今もなお人気が高いです。
名古屋黒紋付染
名古屋黒紋付染は愛知県名古屋市周辺で作られる染物です。
黒紋付は着物の中でも格が高く、冠婚葬祭に使われます。1610年、尾張藩士の小坂井家が藩の旗を作った事が始まりと言われていて、その後藩士や庶民の黒紋付が作られました。
染色方法は、紋型紙を使用して、紋の部分だけ染まらないように型紙を縫いつけ黒染料液に浸す「浸染(ひたしぞめ)」と、紋の部分を伏糊をして、刷毛で染め上げる引染(ひきぞめ)があります。
黒紋付というからには、その魅力は「黒」になくてはいけません。より深みと艶のある「黒」を表現するため、染料の温度や色を微細に調整するには熟達した技や経験が必要です。
京黒紋付染
京黒紋付染はその名の通り京都で作られる染物です。
黒染めが確立されたのはは17世紀初頭と言われています。当時はびんろうじなどの植物染料を用いた染色が一般的でした。けれどかなり労力のいる作業だったため、明治以降はヨーロッパから伝来した染色技術を導入し合成染料なども用いられるようになって今に至ります。
黒以外の紅や藍などで三度染めをする「三度黒引染」などの技法で気品のある黒を生み出しています。
有松・鳴海絞
愛知県名古屋市緑区の有松・鳴海地域で主に生産される絞り染めで、木綿を藍で染色したものが多くみられます。
絞り染めは、布の一部を糸で縛り、染料が入り込まないようにくくり、模様を作る技法のこと。
有松・鳴海絞は、杢目縫い絞りや折り縫い絞り、三浦絞りなど100以上の絞りの技法を駆使して、生地に濃淡や独特な模様を表現しているのが特徴です。
京鹿の子絞
京都府で主に作られている絞り染めです。出来上がりの模様が小鹿の斑点に似ていることから「鹿の子絞」と名付けられました。
複雑で精巧な括り粒が特徴で、これにより独特の立体感が生まれます。着物地全面に絞りを施した「総絞り」の訪問着では完成までに1年半、振袖になると2年以上の歳月を要する、大変手間のかかる染技法です。
琉球びんがた
沖縄県朱里市周辺で作られている染織物です。中国、東南アジア、日本の染色技術が融合し、琉球王朝時代の王様や王族のための織物として発展しました。
綿、絹、麻などの白生地に染め上げる模様は、美しく色彩も原色に近い色を多用しているのでとても鮮やかです。
浪華本染め
大阪府堺市で作られる染織物です。色ごとに糊の土手を作る事により、一度に違う色の染料を使って染める事ができる「注染(ちゅうせん)」という技法を用いています。
はじまりは明治時代で、模様手ぬぐいを量産する目的で開発されました。現在でも浴衣などが生産されています。色鮮やかな彩りが特徴的です。
織物
本場大島紬
鹿児島県の奄美大島で作られる高級絹織物です。約1,300年の歴史を持つ本場大島紬は「世界三大織物の一つ」と称されており、着物愛好家の憧れの着物です。
大島紬は全国各地で作られていますが、特に奄美大島で作られ丁寧に手織りで仕上げられるものを本場大島紬と呼びます。殆ど全ての工程を手作業で行うため、織り上がるまでに1年以上かかると言われています。
染色方法は、材料となる絹糸を泥で染める「泥染め」です。これにより生地は黒く美しい光沢に仕上がります。また複雑な絣柄も代表的で、亀甲柄や、龍郷柄(奄美に自生するソテツをモチーフにしたもの)など模様も様々です。
村山大島紬
東京都武蔵村山市で作られている大島紬です。
通常一匹の蚕が一つの繭を作りますが、二匹以上の蚕が作った「玉繭(たままゆ)」で手紡いた糸を使って作られます。
村山大島紬は、絣板を使った「板締め染色(いたじめ染色)」という技法を使って糸を先染めし、絣模様を表現します。
結城紬
結城紬は茨城県結城地方で作られる「日本三大紬」の一つ。大島紬と肩を並べる高級織物で、着物愛好家にも人気の高い着物です。
真綿から指先で取り出した撚りの無い糸を縦糸と横糸の両方に使うのが特徴で、空気を多く含むため「軽くて暖かい」生地に織り上がります。
着始めは張りがあり、着れば着る程軽く、柔らかい生地へと変化するのが結城紬の醍醐味で「三代着て味が出る」と言われています。
塩沢紬
新潟県の魚沼市塩沢地方で作られる塩沢紬。同じ地域で生産されていた麻織物「越後上布」の技術を絹織物に取り入れたのが始まりとされています。
結城紬とは反対に、撚りの強い糸で織られているため、表面にシボと呼ばれる細かな凹凸ができます。このシボが肌への接地面を少なくし、着心地が爽やかです。6月から9月の単衣の時期の夏向きの着物として使われます。
素朴さの中に、上品なイメージを感じる風合いのある塩沢紬は、大島紬、結城紬と並び、「日本三大紬」と言われています。
信州紬
信州紬は、長野県全域で作られている絹織物です。それぞれの地域によって「山繭(まゆ)紬」「上田紬」、「飯田紬」と種類が分かれています。
素朴な色合いと、渋い光沢が特徴の信州紬の染めの技法は、草木染です。あらかじめ染められた糸で、縞、格子、そして絣の模様を手作業で丁寧に織り上げていきます。
特に「天蚕(やまこ)糸」または「山繭(やままゆ)糸」と呼ばれる、緑糸の繭から作られる織物は、軽くて丈夫です。
牛首紬
石川県白山市白峰(旧牛首村)で作られる紬です。
縦糸には通常の繭を使い、横糸には玉繭を使います。
縦糸、横糸共に手つむぎ糸で作られているのは、紬の中でも牛首紬だけで、軽くて、丈夫な生地は、釘を引き抜くほど強いことから「釘抜き紬」とも呼ばれています。
置賜紬
山形県南部に位置する置賜地方で作られる織物です。
生糸や真綿の紬糸を、県花でもある紅花や、藍、紫紺を用いて味のある風合いに仕上げます。
置賜紬には「米沢織」、「長井紬」、「白鷹紬」があります。
久米島紬
沖縄県久米島町で作られている織物です。一人の織子(おりこ)が、原料の採取から糸の染付、織りまでの全ての工程を手作業で行います。
島に自生する植物を使った染料や、島で採取した泥で染められ、素朴で落ち着きのある深い色合いが人気の紬です。
小千谷紬
小千谷紬は新潟県小千谷市周辺で作られている織物。
塩沢紬同様越後上布の流れを汲んでいて、小千谷地方では小千谷縮として一度発展した後、その技術を用いて小千谷紬が生まれました。
玉糸と真綿の手紡ぎ糸で織られ、肌触りのよさと絹の光沢が特徴です。
近江上布
滋賀県湖東地域の愛知都周辺で作られる麻織物です。滋賀県は古くから織物が盛んで室町時代から麻織物の産地として知られてきました。
細かい麻の繊維で織られる生地はとても柔らかく、通気性もあるので、夏の着物として愛用されています。
染色せず麻そのものの色を生かし織った「生平(きびら)」と縦糸に独特な技法で染めた絣糸を使って模様を表現する。「絣」があります。
宮古上布
(画像引用:宮古島市伝統工芸品センター)
沖縄県宮古島で作られている麻織物で、滑らかな風合いとツヤが特徴です。苧麻(ちょま)という麻から繊維を抽出した糸で織られます。染料は、沖縄本島で栽培される琉球藍です。
苧麻の繊維を細かく手で裂いた細い糸で織るため、通気性が高く、夏の着物として使われます。
八重山上布
沖縄県八重山都周辺で作られる麻織物で、さらっとした手触りが特徴です。
染料にはヤマイモ科の「紅露」(クール)が使われ、「刷込捺染技法」(すりこみなっせんぎほう)と言われる技法を使い、こげ茶色の絣模様を表現します。
秩父銘仙
埼玉県秩父市で作られる織物です。明治時代から一般庶民の普段着として愛用されてきました。
織り方も特徴的で、仮織りと言って、反物状にした縦糸粗く横糸を通して、模様を染色した後、その横糸をほぐしながら織る「ほぐし織り」という技法をを用います。
色の違う縦糸と横糸を使って織りあげるため、玉虫色の光沢を放つ生地が織り上がります。
本場黄八丈
東京都八丈島で作られる織物です。八丈島に自生する植物「コブナグサ(黄色)」、「樺(マダミの樹皮)」、「黒(シイの樹脂)」の3色のみを使って手織りされます。
渋い色を使いますが、この3色のコントラストが非常に鮮やかな着物です。
喜如嘉の芭蕉布
沖縄県北部の大宜味村(おおぎみそん)喜如嘉で作られる織物です。
大変希少価値が高く、「幻の織物」とも呼ばれていて、芭蕉から繊維を取り出した糸で織られます。糸や染料などの素材は全て地元産です。
さらりとした通気性のよい生地で肌の接地面が少ないので、涼しく、湿気の多い沖縄に向いています。
本塩沢
新潟県南魚沼市周辺で作られる織物です。絹糸に通常の7~8倍強い撚りをかけた糸を使い織られる生地は、シボと言われる凹凸ができます。
肌への接地面が少なく、シャリ感があるので夏の着物として使われます。細かく鋭い絣模様で、落ち着きのある上品さが特徴です。
久留米絣
福岡県久留米市周辺で作られる織物。
備後絣(びんごがすり)、伊予絣(いよがすり)と並ぶ日本三大絣の一つで藍色が印象的な木綿生地の着物です。
通気性があり、夏は涼しく、冬は暖かく着用できます。丈夫なので普段着として使われます。手作業で絣を織り上げるため、柄のかすれやにじみが特徴的です。
伊勢崎絣
群馬県、伊勢崎市周辺で作られる絹織物です。着れば着る程光沢が出て味わいが増します。古くから養蚕が盛んな伊勢崎の織物の歴史は1200年以上にもなります。
素材には生糸、真綿の紬糸を使用していて、絣模様のバラエティーも豊富です。
十日町絣
織物の産地、新潟県十日町市、津南町周辺で作られる織物で、光沢のある絣模様が特徴です。
渋い色を使い、落ち着いた印象に織りあげた生地は、普段着やおしゃれ着として使われ、着物愛好家に親しまれています。
弓浜絣
鳥取県境港市周辺で作られる織物です。藍色の糸に白色の糸で模様を表現していきます。
地元で栽培された伯州綿という綿を使い織りあげた素朴な柄とざっくりした風合いが特徴で、動きやすく洗濯など手入れもしやすいので、普段着やコースターなどの日常品として愛用されてきました。
琉球絣
沖縄県で作られる絹織物です。約600種類の多彩な模様は、沖縄の自然や動植物をモチーフにしたものや、美しい独特の幾何学模様もあります。
図案を元に模様の部分を手くくりで締めあげ、防染した糸で絣模様を表現します。
阿波正藍しじら織
徳島県徳島市で作られる綿織物です。横糸の張力を利用してシボを作るため、肌に張り付きにくく、夏の着物として使われます。柔らかく肌ざわりがサラっと気持ち良く、浴衣の生地としても用いられます。
十日町明石ちぢみ
十日町明石ちぢみは京都と並ぶ織物のまち、新潟県十日町市周辺で作られる織物です。美しい図案が特徴で、明治中頃から作られています。
強い撚りのある糸を使用しているので、織り上げたときにシボと呼ばれる凹凸ができ、さらっとした手触りの薄手の着物です。
小千谷縮
小千谷縮は新潟県小千谷市周辺で作られている最高級の麻織物。ユネスコ無形文化遺産としても登録されています。
雪の上に布を晒す「雪晒し」の工程が特徴的で、現在では平織のものを越後上布、シボのある縮織りのものを小千谷縮と分けて呼んでいます。
糸づくりから反物になるまで手間をかけて織られた生地は、通気性や吸湿性が良く、特に夏に最適な着物です。
西陣織
(画像引用:西陣織工業組合)
京都市街の北西部で作られる絹織物です。この地域のことを西陣と呼ぶことからこの名前が着きました。西陣織の歴史は古く、平安朝から現在まで伝えられています。
鮮やかに染められたいくつもの糸を使って模様を織り上げて行くため、とても豪華な印象で、模様に立体感があるのが特徴です。
博多織
(画像引用:博多織工業組合)
福岡県福岡市博多地区周辺で作られる絹織物です。
細い横糸を多数使用し、細い糸を数本まとめた太い縦糸を打ち込んで、精密に織られます。厚みがあり、ハリのある生地はしなやかでありながら、大変丈夫です。
1本の博多帯を作るのに数か月から半年の歳月を要します。
多摩織
東京都八王子市周辺で作られる絹織物です、八王子は織物が盛んで「玉結城」「風通織(ふうつうおり)」「紬織」「捩り織」「変り綴(つづれ)」の5つの織物が玉織りとして伝統工芸品の認定を受けています。
軽くてシワになりにくいのが特徴で、それぞれの工程ごとに専門の職人が分業化を行い仕上げています。
桐生織
群馬県桐生市で作られる高級絹織物で、「西の西陣、東の桐生」と呼ばれる程、有名な織物の産地として1300年以上に渡り発展してきました。
強い撚りをかけた糸を使って織り上げるため、多彩な色の横糸で鮮やかな模様を織り上げた生地は、高級感があり、軽くて独特のシャリ感があります。
読谷山花織
沖縄県中頭郡読谷村で作られる織物です。織り地に先染めされた糸で幾何学模様を織り込んでいます。
素材は、絹又綿を使用し、染料には主に琉球藍、福木(ふくぎ)、すおうなどの植物染料が使われています。
琉球藍の生地に赤、黄、白の糸で花模様を表現しているのもが代表的な柄です。
読谷山ミンサー
沖縄県中頭郡読谷村周辺で作られる織物です。
ミンサーとは「綿でできた細い帯」という意味です。厚みがあるしっかりとした生地で、「グーシバナ技法」というものを用いて織りあげられます。
読谷山花織と同じく、自生している琉球藍、福木等を用いて糸を染めます。
八重山ミンサー
沖縄県八重山郡竹富町、石垣島で作られる織物です。
木綿糸を使い「うね織」という織り方で織られます。柄は縞模様と藍色の地に5つと4つで構成された絣模様が主で、染料は、主にインド藍や、琉球藍、紅露(クール)が使われます。
首里織
沖縄本島で織られる織物です。
原料となる糸は、絹、木綿、麻、芭蕉なと多種で、織り方も「花倉織」「花織」「道屯織」「首里絣」「首里ミンサー」と様々です。染料は地域に自生する、琉球藍、ふくぎ、しぶきなどを使います。
紋織、絣など様々なものが織られるのが特徴で、華やかさと気品のある美しい織物です。
与那国織
沖縄県八重山郡与那国町で作られている織物です。萩織物の「与那国花織」、縞織物の「与那国ドゥタティ」、紋織物の「与那国シダディ」、絣織物の「与那国カガンヌブー」という種類があります。
その中でも代表的なものは、与那国花織で、格子柄の中に小さな花模様を表現しています。
知花花織
沖縄県沖縄市知花で作られる織物です。
連続した花のような幾何学模様が織り込まれているのが特徴です。縦方向に柄が繋がる経浮(たてうき)花織と、刺繍のように糸模様が浮く縫取(ぬいとり)花織とがあります。
戦争などで織物技術の伝承が困難になりましたが、平成元年に蘇り現在は織り手を育成中です。
南風原花織
沖縄県島尻郡南風原町周辺で作られる織物です。
琉球藍、フクギなど自生する植物を使って染色します。多彩な色を使って立体感のある花のような模様を表現していて、刺繍をしたように仕上がります。
二風谷アットゥㇱ
北海道沙流郡平取町(さるぐんびらとりちょう)で作られる織物です。
通気性があり、非常に丈夫で、水にも強い生地には、オヒョウという木の皮から採取した糸が使われています。
アイヌ文化の中で育まれ、100年以上前から同じ製法で作られている織物で、着物や半纏、帯などがあります。
羽越しな布
山形県鶴岡市関川地区・新潟県村上市山北地区で作られる織物です。シナノキ、オオバボダイジュ、ノジリボダイジュの樹皮の内側から繊維を抽出し、織られます。木の皮から糸を作る織物では日本最古です。
素朴な風合いで、耐久性があります。ざっくりとした手触りで、衣服や穀物や敷物、など生活用品として使われていました。
奥会津昭和からむし織
奥会津の東に位置する昭和村で作られる織物です。
イラクサ科の多年草、からむしの茎から繊維を抽出した糸で織られます。
吸湿性、速乾性に優れ、さらりとしているので着心地が良く、夏の着物として着られます。 落ち着きのある色使いが特徴です。
その他繊維製品(刺繍・くみひも・足袋)
加賀繍
石川県金沢市で作られている刺繍です。
絹糸や金糸、うるし糸等を使い色鮮やかに刺繍が施されます。無地の生地に刺繍される模様はとても繊細で、高度な刺繍技術を要します。
華やかさと奥ゆかしさを兼ね備えている、立体的で美しい図案が特徴です。
京繍
京都府京都市周辺で作られている刺繍です。繊細さと優雅さを兼ね備えた京繍は、高度な技術を必要とします。絹糸、金銀の糸など、多彩でみやびな色の糸を使い30通りもの刺繍技法で刺繍されます。
最大の特徴はその豪華絢爛さで、加賀刺繍とは違い、あらかじめ染められた模様の上から刺繍を施します。
伊賀くみひも
京都府京都市、宇治市周辺で作られている組紐(くみひも)です。皇族や貴族などの高い位の人の装飾品として作られた雅な京工芸です。帯締めや羽織ひもに使われています。
絹糸を使って手作業でくみ上げられる京くみひもの組み方は40種類以上にものぼり、その編み目は複雑で繊細です。強度もあり、帯締めはしっかり締まります。
京くみひも
雅三重県で作られているです。絹糸を使い、金銀の糸を使用して豪華に作られます。キレイな光沢と、絹糸の華やかな印象が特徴です。
伊賀くみひもの中でも手で組み上げる「手組みひも」が代表的です。
行田足袋
埼玉県の北部行田市で作られる足袋です。行田市は木綿の産地でもあり、中山道が近くに通っていたことから、江戸時代から旅行用の足袋が盛んになりました。
明治以降に機械化されてから最盛期には全国で80%のシェアを誇り、現在でも全国シェア半数程を生産しています。
伝統工芸品の着物の買取相場一覧
もう使わなくなってしまった着物を持っている場合、手放すとしたらいくらになるのか気になるところですよね。
基本的に上記で紹介したような伝統工芸品は、手作業で時間と労力をかけて作られているため人気が高く、買取価格も自ずと高額になります。
もちろん着物の買取相場はその着物にシミや汚れ、シワなどが無いかといった状態やサイズ、着物の価値を証明する証紙の有無によって異なるため一概には言えません。
それを踏まえたうえで、まずはそれぞれおおよその買取相場を見ていきましょう。
染物 | 東京染 小紋 |
一般的な東京染小紋… 1,000~10,000円程 有名作家物…30,000~80,000円程 |
京小紋 | 一般的な京小紋…1,000~20,000円程 | |
東京 友禅 |
一般的な東京友禅… 10,000~30,000円程 有名作家物…50,000円以上 |
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京友禅 | 型友禅…20,000~30,000円程 手描き友禅…30,000~100,000円程 有名作家物…100,000円以上 |
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加賀 友禅 |
一般的な加賀友禅… 10,000~150,000円程 有名作家物…60,000~500,000円程 |
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名古屋 友禅 |
一般的な名古屋友禅… 15,000~30,000円程 有名作家物…50,000円以上 |
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有松・ 鳴海絞 |
10,000円前後 | |
京鹿の子 絞り |
5,000円~25,000円程 有名作家物…100,000円以上 |
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琉球 びんがた |
一般的な琉球紅型… 10,000円~50,000円ほど 作家物…100,000円前後 |
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織物 | 本場 大島紬 |
30,000~100,000円程 |
結城紬 | 一般的な結城紬…数千円~10,000円程 本場結城紬…25,000円~数十万円以上 |
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塩沢紬 | 10,000~150,000円程 | |
信州紬 | 3,000~10,000円程 | |
牛首紬 | 30,000~50,000円程 | |
置賜紬 | 3,000~10,000円程 | |
久米島紬 | 3,000~10,000円程 | |
小千谷紬 | 3,000~10,000円程 | |
近江上布 | 5,000~20,000円程 | |
宮古上布 | 30,000~100,000円程 | |
八重山上布 | 30,000~50,000円程 | |
西陣織 | 8,000~20,000円程(帯) | |
本塩沢 | 15,000~30,000円程 | |
秩父銘仙 | 8,000~20,000円程 | |
本場 黄八丈 |
20,000~80,000円程 有名作家物…100,000円以上 |
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喜如嘉の 芭蕉布 |
5,000~80,000円程 有名作家物…100,000円以上 |
|
久留米絣 | 9,000~15,000円程 | |
伊勢崎絣 | 5,000~20,000円程 | |
十日町絣 | 5,000~20,000円程 | |
弓浜絣 | 5,000円前後 | |
琉球絣 | 10,000~30,000円程 有名作家物…30,000円以上 |
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十日町 明石ちぢみ |
5,000~20,000円程 | |
博多織 | 8,000~10,000円程(帯) | |
阿波正藍 しじら織 |
5,000~15,000円程 | |
読谷山 花織 |
50,000~60,000円程 | |
首里織 | 10,000~30,000円程 | |
知花花織 | 5,000~8,000円程 | |
南風原 花織 |
60,000円前後 |
ただしどんなに高価な着物であっても、保存状態が悪くカビがついてしまっていたら、その価値はガクッと下がってしまいます。
大切な着物はきちんと定期的に手入れをしましょう。
伝統工芸品の着物が高価買取となるポイント
伝統工芸品の着物は貴重であるため需要が高く、買取価格も自ずと高額になります。
ただし査定にはいくつかポイントがあるため、どんな着物だと高く買い取ってもらえるのか、どんなことに気を付ければよいのか、以下の4点をおさえておきましょう。
- サイズは大きいものの方が高く売れやすい
- シミや汚れ、生地の傷みがなく保存状態がいいほど価値が高い
- 証紙、落款など着物の価値を証明する付属品は必ず見せる
- 専門の買取業者に見てもらうのが何より大事
知らないと大損する可能性もあるので、買取に出す前にしっかりと確認しましょう。
サイズは大きいものの方が高く売れやすい
着物のサイズについては、大きいものの方が高価買取されます。
というのも着物は着る人に合わせて仕立て直すことが一般的なもの。
大きいものを小さくすることは割と簡単にできる上、おはしょりなどで調節も可能ですが、逆に着物が小さい場合は、縫い代部分に生地が余っていないと広げて大きくすることは難しくなってしまいます。
大きいものの方が融通が利く分買い手が付きやすいので、高価買取が期待できます。
シミや汚れがなく保存状態がいいほど価値が高い
シミや虫食いなどについては、表や裏に関係なく、ひとつでもあれば査定価格に影響が出ます。
伝統工芸品の着物のなかには自宅での手入れが難しいものもあるので、専門のクリーニングに出してあげるのがいいでしょう。
専門の買取業者では、シミ抜きで取れる汚れかどうかも判断してくれ、それを加味した価格をつけてくれます。
よっぽどひどい状態でなければ買取不可とはならないので、クリーニングに出せない、伝手が無くて適切なクリーニング業者がわからないというときはそのまま見せてしまいましょう。
無理に自分でシミ取りをすることは、むしろ着物の価値を下げることになるので絶対NGです。
ただし買取業者に見せる前にも、最低限陰干しをしておくのがベター。
余分なシワや防虫剤などのにおいがとれて、印象が良くなり買取額アップが見込めます。
証紙、落款など着物の価値を証明する付属品は必ず見せる
(画像引用:経済産業省ホームページ)
証紙や落款は高価買取のキーポイント。
証紙とは、簡単にいうと品質証明書のようなものです。着物の素材や産地、織り方、染め方などが記載され、「この着物は高級品である」と保証してくれます。
前述した通り伝統工芸品に指定されているものには、「伝」の文字と日の丸をあしらった国の伝統工芸品マークがつけられています。
証紙が付属している場合は、大切に保管し査定時は必ず提出しましょう。
また、落款とは、着物作家のロゴマークのようなものです。着物作家には独自の落款(ロゴマーク)を持っている場合があり、着物を手がけた際に「自分が仕立てたものである」と証明するために刻印します。
有名な作家であればその価値を証明することができ、類似品と見分けることもできます。落款はおくみか襟先にあることが多いです。
ただし、ない場合でも即偽物というわけではありませんし、買取してもらえないわけでもありません。保存状態によっては高価買取をねらえるので、あきらめずに買取に出してみましょう。
専門の買取業者に見てもらうのが何より大事。できれば複数の業者に見積もりを
着物を売る方法はいくつありますが、高額買取されやすいのはやはり専門の買取業者です。着物専門の査定士は、実績も豊富なので大切な着物を正しく評価してくれ、安く買いたたかれてしまう心配がありません。
買取業者に依頼したい場合、インターネットや電話での査定依頼が簡単です。査定は自宅や店頭宅配などの種類があるので、予定に合わせて選ぶこともできます。
査定価格に同意すれば、その場で買い取ってもらえるので手間もなし。もし買取価格に納得できなくても、査定自体は無料なので損になることはありません。
またできれば一社ではなく複数の業者に査定を依頼するのも、より高く買い取ってもらえるポイントになります。
おすすめ買取業者|バイセル
バイセルの基本情報 | |
キャン ペーン |
最大現金10万円 プレゼント ※5,000円以上の買取 (抽選5名/宅配は対象外) |
買取方法/ エリア |
出張買取:全国 持込買取:13か所 宅配買取:全国 (一部離島除く) |
申込方法 | インターネット 電話 |
受付時間 | 24時間365日 (訪問は9時~17時) |
買取額の 支払い |
出張買取:その場現金 持込買取:その場現金 宅配買取:約2営業日以内銀行振込 |
公式サイト | 公式サイト |
バイセルは2年連続「出張買取顧客満足度一位」の実績ある着物買取業者。
全国対応の出張買取がメインで、北海道から沖縄まで最短即日で査定をしてくれます。
出張費や査定料は当然無料で、少量の着物でも査定が可能。逆に大量に着物を売りたいときも、着物専用倉庫を持っているバイセルならば無料で引き取ってもらえます。
ただし持ち込み買取の場合、当日持ち込み可能な店舗数は、名古屋栄セントラルパーク店、横浜元町店、有楽町店、東京本社(要予約)の4店舗と少ないので要注意。
おすすめ買取業者|福ちゃん
福ちゃんの基本情報 | |
買取金額20%UP (宅配・持込は対象外) |
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買取方法/ エリア |
出張買取:全国対応 持込買取:11か所 宅配買取:全国対応 |
申込方法 | インターネット、LINE 電話 来店(予約不要) |
受付時間 | 9:00~20:00 ※年末年始を除き無休 来店の場合は、店舗により異なる |
買取額の 支払い |
出張買取:その場現金 持込買取:その場現金 宅配買取:1~5 営業日後銀行振込 |
公式サイト | 公式サイト |
福ちゃんは600万件もの買い取り実績のある着物買取店。
出張、宅配、持ち込みの買取査定が可能です。ただし店舗数は少なめでエリアが限られているため、店舗の無い地域では出張買取か、宅配買取を選ぶようにしましょう。
また、メールやLINEを使った簡易査定もできるので、実際の査定を依頼する前に目安を知りたい、他の業者との見積もりを比較したいというときにも便利に使えます。
まとめ
日本の伝統文化である着物。中でも昔ながらの技術を今でも受け継ぎ続けているものが伝統工芸品として指定されています。
もちろん伝統工芸品は国や都道府県による文化の保護が受けられますが、同じくらい大切なのは私たちがその文化を愛し、使い続けることではないでしょうか。
もし自分が着なくなった後も、誰かに着続けてもらうことで、その輪を広げていけるならとても素敵なことです。
そのためにも適当な処分をせずに、信頼できる人や業者に託すようにしたいですね。